『祝辞』(レヴィザン+スクベル)-1 ※ボスの誕生日 |
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| 物で溢れた人だから、物を選ぶのは難しい。 (一週間を、切ったな) 椅子の心地にも煩い人で、やっと目星をつけた奉げ物も、 悩みに悩んだ結果にどうにか、自室で控えていた。 (だが一番に重要なのは祝辞のタイミングだろう) 「やはり気持ちが大事だ」 「うん、俺もそう思う」 独り言に反応があり身が強張る。 「貴様・・・!」 「フーン」 「座るな!」 部屋の戸を開けたまま停止していたのが悪い。 悪魔の勝手を責めるには悪魔に慣れすぎていた自分。 奉げ物の高価な椅子の上、足を組んだ悪魔。 「ボスに?」 「ああ」 「フーン」 「・・・」 椅子に埋もれる悪魔の、呟きが耳。
(あと六日) (あと五日) (あと四日) (あと三日)
(明後日) (明日) (明日・・・正確には二分後) (当日・・・お顔をまともに拝見できるだろうか)
「ボス!」 配慮し、程良い時間として、平常よりは早めの、 しかし朝日の注ぐ頃、顔を出すと残念な光景。 一番を逃したらしい目の前、悪魔を腰に巻きつけたその人は、 平常の調子で平常の息をし平常に視線を寄越した。 「レヴィか」 「お・・・はようございます」 「・・・」 「・・・」 不覚にも機会を逃した原因は照れ。 勝手な意識はその人を普段より輝かしくしており、眩しかった。 息も視線も調子も動作も変わらぬ癖、魅了される力。 この人がこの日生まれた、この人が今目の前に居る、この人は年を取った。 一般的な生誕の意味が、不思議な形で胸に沁みる。 悪魔がにやにやと笑い出しそうにこちらを観察していたのも手伝い、 まさかの退却。平常でないのはこちらだった。 「う゛ぉお゛い、レヴィてめぇボスさんはどうしたぁ、 祝いの席が整うまでの外出を忠告しねぇとなんねぇ」 すれ違いざま、声を掛けられて通路の端、睨めば睨み返される。これも平常。 「・・・御生誕日に不自由をさせる気か」 「仕方ねぇだろう、祝賀に乗じた暗殺ほど多いもんはねぇ」 「なら貴様と俺で外部を固めればいい、お傍にはベルフェゴールが居る」 「あの野郎、起きて居ねぇと思えば恋人より上司優先かぁ!」 「当然だ!」 「てめぇが返事すんなぁ!誤解されんだろうがぁ!」 「されてたまるか!」 「大体てめぇは何で居んだぁ、今頃はボスさんの横にぴったりしてると思ってたぜぇ!」 「残念ながらぴったりしてるのはあのクソガキだ」 「・・・」 「俺は祝辞さえまだ・・・」 「何だぁベルの奴に妬いてんのかぁ、安心しろぉ、 ありゃ俺しか見てねぇ」 「と、思いたいんだな」 「う゛ぉお゛い、角が立つぞぉ?!」 「さっさと行け、ボスをお祝いしろ」 「後で覚えてろぉ、てか、てめぇこそさっさと祝辞くらい済ませろぉ!」 「・・・」
(四時間) (三時間)
減って行く今日の残り。身内と言えど部隊を挙げての祝いで、 来賓もある。この席が終わり、ボスの気も落ち着き、人のもう少し減ってから。 より強く祝おう、全身全霊で祝辞を伝えよう。想いのすべてを込めて。 「レヴィ」 「何だ」 「ボスにさー、ちゃんと祝辞した?」 「・・・いやまだだ」 「俺ね、さっきオメデトウついでにちゅーしちゃった、ディープなやつ」 「っ」 「思いっきり顔顰められたけど!ししし」 「・・・不潔だ」 「インパクト狙おってんならもう何やったって無駄だよ? 俺のが一番キョーレツだろうからさぁ」 「失せろ悪魔め」 「スクアーロには内緒な」 「・・・」 悪魔の去ってから一度ボスの身の確認。ルッスーリアが着いている。 それからスクアーロの元に足を運んだ。
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Friday, 26, Oct | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ヴァリアー | 管理
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