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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



『攻防』(正γ ※蘭γ前提)

白蘭さんの指示に従って、駆けつければ静かな年上の人がいた。
いつもはピリピリと伝わって来る威圧がなく、様子がおかしい。
「あの・・・」
「ああ・・・」
話掛ければ反応はあって、曖昧な声が返って来た。
向こうの部屋の内だったが、一人対一人、取り巻きがいないだけで、少し距離が近く感じる。
「平気ですか・・・」
「・・・」
ソファでじっと、下向いて動かない身。
「あの・・・」
「ああ・・・」
今度は小さくて、どこかぼんやりとした返事。
駆けつけて見守るように、それが指示だった。
(見守るって、何を?)
「あの・・・」
「・・・」
立場も仕事も、わからずに途方にくれる。
「あの・・・」
「ああ、・・・何だ、あいつは」
「?」
「・・・本当に、・・・手に負えない・・・」
「??」
呂律の、少しおかしなところがあり焦る。
酒臭さはなく、あったとして簡単に酔うようにも見えない。
「えっと・・・」
意を決し事態への、質問をしようかと思う。
「僕は・・・」
「・・・悪いが、引き上げてくれ」
「・・・え」
「頼む」
成熟した、落ち着きのある声で、頼むなどと言われたらむず痒い。
半笑いの間抜けな顔で、立ち尽くすしかないこちら。
「・・・意地をはるもんじゃないな」
「はぁ・・・」
「疲れているんだ、・・・添い寝をすると言うから、追い出した、・・・眠くはないと、言い切って、もめた。
 まだ眠るつもりはないと、・・・そうしたらどうも、向こうさんは、気に食わなかったらしく・・・」
「・・・」
「・・・見張りを寄越すとはな」
「・・・」
「眠ったなら最後、きっと・・・」
「・・・」
「・・・」
「あの・・・」
「・・・ああ、・・・悪い」
「平気ですか」
「平気だ・・・が、さすがに限界だ」
(矛盾したこと言ってる、頭溶けそうなんだろうな)
「あの人も酷ですね」
「・・・ああ」
「引き上げませんよ」
「・・・、 ・・・ああ」
ふつふつと込み上げる、笑いが喉を苦しめる。
(この人、今眠たいんだ)
畏怖していた存在、それが人間らしい事情に、振り回されているということ。

可笑しくて愛しい、奇妙な感情。


「報告では起きていたと、伝えましょうか」
「・・・」
「眠っていいですよ、眠いんでしょう、どうぞ」
「・・・ありがとうよ」
「ただ、こちらが寝顔を拝見させて頂くことに」
「・・・」
「それでもよろしければ、どうぞ」


END



Saturday, 04, Aug | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ミルフィオーレ | 管理

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