『甘いもの』(白蘭×γ) |
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| 「お一つどうぞ」 「遠慮しとく」 マシュマロ袋を片手、笑顔。 部下達が背で睨みを効かせていること、俺自身が牽制のオーラでいること。 白蘭はものともせずぴくりとも表情を変えない。 「甘くておいしいよ?」 いかにも甘いものを受け付けない顔、と自負している俺は眉間の皺を増やす。 差し出されたマシュマロの袋を無視する。 「この前ケーキ屋の箱持ってたよね」 「・・・」 「あそこのショート僕も好きだから、話合うかと思って」 (止せ・・・) 「誰かにあげたってわけでもないでしょ、見張ってたけど誰とも接触してなかったし」 「・・・」 見張っているなよ、多忙だろうおまえは。 心中突っ込みつつ冷や汗がじわり。 「たまには糖分が欲しくなる」 ざわ、と後ろ、部下たちの反応が一番の衝撃。 わかっているわかっている似合わぬことぐらい! 「兄貴、マジですか」 「黙ってろ」 今ほど部下を憎んだことはない。 おずおずと掛けられた声が尚更気に障った。 「わざわざ俺の隠れた嗜好を曝してくれて、ありがとうよ、 暇なんだな、お偉いさんっていうのは?」 「そうでもないよ、ただね、 感動したんだよこっちは、男で甘いもの好きって、 ちょっと恥ずかしくてなかなかああいう行動、 でられないよね、直接買いに行くとか」 馬鹿だな大抵土産だと思われるんだよ小僧。 「僕も食べたいな、あそこのショート」 「・・・」 「代金任せてくれていいから、 今度は多めに買って?それで呼んで」 「誰を」 「僕を」 「・・・」 また部下たちがざわざわとしている。 「今週入って3度も目撃してるんだもん、そろそろ糖尿病ならないかなってしんぱ・・・」 思わず奴の口に手を当て、引きつったこちらの笑い顔はそろそろ痙攣している。 「買えばいいんだな、買えば」 「僕のところに持って来て、それで一緒に食べるところまでね」 「・・・」 ドン、と背に重み。憂鬱という名の重みだった。 何時の間にか部下が、三歩ほど下がった位置にいて泣きたくなる。 「覚えてろ・・・!」 「約束ね」
END
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Monday, 13, Aug | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ミルフィオーレ | 管理
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