『怪我』(白蘭×γ) ※白蘭サド注意 |
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| 「時代遅れさん」 「誰のことかな」 「誰のことでしょうね」 組織の公共場は嫌いで、 白の行き来する場になど、 本当は居たくなかった。 「部下と待ち合わせ?」 「待ち合わせ」 座っていた広いベンチ、端に座っていたのが幸いし、 向こうは腰を掛けず立ったままで、始まった会話。 さっさと終わらせたい。 「大将は大変だね、弟分達の世話ばっか見てて、 自分の世話見れてないの?」 「・・・」 無視、するしか対策が取れない。 今は分が悪い。 明後日を向く。 獲物がでかかった、それだけのこと、 幹部が戦闘好きじゃ悪いのか。 滅多にしない怪我の存在が、 スースーとして来て落ち着かない。 「梃子摺ったらしいね」 「良い戦いだった」 「殺し合いに良いも悪いもある?」 「ある」 「泥臭いのは嫌いだな」 「戦闘は泥臭ぇか?」 「・・・力でごり押しするみたいなのが、嫌いかな」 「はは、そうだな、力が無きゃ押せねぇからな・・・ ッ・・・?!」 「あ、痛かった?」 包帯の巻かれた、腕を思い切り掴まれたらしい。 「何のつもりだ」 「何のって?」 「ッ・・・悪ふざけに付き合う暇はないんだ」 引きつった笑いを浮かべると、 人質に取られたままの腕を、さらに強く掴まれる。 「・・・っ・・・」 「痛い?」 「・・・良い子だから放してくれ、 手当てしたばっ・・・ッ」 「どしたの?」 目に少し溜まった涙に戻れと命じながら、 「・・・サドかおまえ」 苦し紛れ、毒づくと返って来た良い笑顔。 「いや、素敵な反応だな~と思って」 「・・・(サドだ)」 年下の、それも白の、細腕の女顔に、 涙目にされたなど恥過ぎて笑える。 力任せ、腕を引いて束縛から逃れようと勢いよく、 予想外、腕が抜けず、腕を掴んでいたその人間を、 引っ張ってしまったことになり青ざめる。 怪我は腹にもしていて・・・ 「・・・ッグ・・・!!」 体当り、された身が悲鳴を上げた。 ベンチに男二人、崩れ込んだ景色。 (寒すぎるだろ) 「あー、ここも怪我してたんだ、 早く言ってよ」 「・・・止せ!!」 こちらに圧し掛かった美しい男は、艶やかな笑みを浮かべた。 戦闘になれば気にならない怪我は、久しぶりにしたせいか、 今は腫れ物のようにデリケートな場所になっていて・・・ 「ッ・・・」 思い切り押されたと同時、額に脂汗が浮き出る。 「耳赤いよ」 「・・・」 本気で泣きそうになっている大の男を、 楽しそうに見つめる若造。つくりもののようなその顔が近づいてくる。 「っ」 ちゅ、と音を立てて唇。吸い付かれたようだった。 避ける余裕の無かった自分に同情しながら、 表情を作るのに疲れ、ぐったりとベンチの上、伸びる。 「力抜けるようなのした覚えないけどな」 「・・・ガキにそんなもの期待するかよ」 不快さを露わに、皮肉気に笑って見せる。 「何か可哀想だね」 突然呟かれた言葉、誰がとは聞けない。 肉への痛みより、ずっと聞いた一言、 何がだろうか立場がだろうか。 (見下していやがる) 新しいものに、飲み込まれた古いもの。 「気に入らねぇな、肉体派の何が悪い、 同情される言われはないぞ」 (命じる側がそんなに偉いか、昔は命じて且つ戦ったもんだ) 「何の話してるのかな?怪我して可哀想だと思っただけだよこっちは?」 「・・・それくらい」 「肉体派が悪いとも可哀想とも言ってない、 使われて怪我してる自分が不憫だって思ったの? そんなことないよ、重要な役割」 「・・・」 「よく働いてる」 覆い隠していた本音を、溢させられてしまった。 「・・・」 思ってもいないだろう言葉、誤魔化しには苦しい。 しかし何故か胸の何かの、つっかえが少し軽くなった。 「他に不満は?」 「さてな」 上に立たれる代わり、気遣われるむず痒さ。 認めたくない気持ちを、 和らげられること、 それさえも計略と、 わかっていて安心する、 自分に溜め息が出た。
END
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Saturday, 04, Aug | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ミルフィオーレ | 管理
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