『低レベル』(十ミヤ→マイ) ※十ミヤの皮をかぶったマイミヤ |
|
| 「ねぇねぇあのさぁ、ちょっとカンパして欲しいんだけど?」 まさかの失態、ぼんやりしていた。 三宅に連れられて入ったゲームセンターで迂闊、 絡まれたらしい、近頃の且挙げの常等文句が我が身に。 サイフの中身を思い出せば、 (あぁ、まずい、丁度札入ってる、 おろしたばっかの諭吉さん!) 「あんま見ない顔だよねー、この店始めてー? 色々マナーとかあるし、そこら辺教えてあげるからさ、 授業料だと思ってさぁ・・・」 (誰か、誰か・・・!) 人を探しに入っただけで、三宅もあまりこの店には慣れていないだろう。 呼んだらあいつも巻き上げられるよな・・・ や、てか戦う気はないのか俺? 「悪いそいつ知り合い」 強い声、聞き覚えのある、まっすぐな。 「誰だよ」 「誰でもいいだろ」 十字傷の不良、三宅の尋ね人。 目の戦い、 数分、 強面集団が背を向ける。 (勝った・・・!) 「おまえ、・・・舞茸、 どうした」 「どうしたも何も、三宅の付き合いで」 「・・・」 「たぶんあんた探してんじゃないですか」 「はぐれたのか」 「迷子じゃないですよ」 「迷子なのか」 絡まれていた俺、絡まれてた人間を救った不良。 (うわぁ・・・) 「いつも一緒にいるよな」 ぼそりと呟かれ眉を上げる。 「おまえらって」 じっとりと目、あ、妬まれている。
「舞茸、悪い待たせた」
そこで漸く三宅がやって来て片手を挙げる。 俺の背にいる十文字に気づくと、一瞬呆けた顔を作り、 それから一気に不機嫌そうな表情。 「あー、ストレス晴れた」 わざとらしい独り言。ゲームなどして来たわけじゃなかろうに。 「・・・用は?人探してたんじゃないの」 「人?は?何の話だよ?」 (出た・・・) 「人って、俺か、探しに来てたか?」 遠慮がちに聞く不良、 (うん、墓穴) 「まっさか、ぜんぜん違いますから、 勘違い恥ずかしー」 「直接連絡しろよ」 「・・・」 部活のない時、テスト週間とかテスト週間とかに、 不良がここに立ち寄る情報を、掴んだ三宅の思惑。 「教えたろ、連絡先・・・」 「うっぜーんですけど、 何で俺がおまえに会いたいなんて連絡入れなきゃなんないんでしょうか?」 「会いたかったんだろ」 「・・・っ」 「だからこんなとこ来たんだろ」 「舞茸、帰ろう、こいつ頭沸いてるから」 良く災いする三宅の照れ性。 「おまえが素直なら・・・」 俺絡まれなかったんだけど。 「好い加減にしろよ」 ちょっとプチ敗北感まで味わっちゃったんだぞこっちは。 「舞茸?」 「おまえらのごちゃごちゃに付き合わされんの疲れた」 「・・・おい」 怒ったのは久しぶりだった、しかもこんな些細なことで。 「舞・・・」 三宅の声を無視しずんずんと歩き出し店を出る。 「舞茸、待てって」 (追ってくるな) 「あいつに何かされた?」 助けられました。 「それとも俺が何かした?」 「何も」 「舞茸・・・」 「何だよ」 「親友と恋人なら、俺は親友を取るからな」 「・・・」 「二週間会ってなかったけど、 置いて来たから、あいつ」 「・・・うん」 どうしようもないこと、低レベルな感情。 それを満たしてくれる、低レベルなアプローチ。 何のプラスにもならない。それが俺達らしいコミュニケーションで。 まっすぐきっちり生きてきたあの不良などには、 きっとわからないこの気回しと台詞の価値は、 俺に取っては魅力的だった。 「俺たち似たもん同士、駄目なとこお互い、たくさんあるし、 そういうの全部知ってて、駄目ってことに諦め合うのって、 凄く俺には気が楽で、 だから俺はおまえと居る時が一番落ち着く」 「俺も」 「十文字は好きだけど、 俺の一番はおまえだから」 「知ってる」 四六時中向こうを考えてるくせ、 肉体的に繋がったりしてるくせ、 きっと三宅は天秤に俺と、あの不良を乗せたら俺側に、 重さを見てくれるのだと思う。そういう関係。 あの人の正当な愛とつりあえない、三宅の悲しい心。 それに安心する、俺が一番腑抜けだった。 「大切にするからさ、 親友として」 「・・・うん」
END
| |
|
Saturday, 04, Aug | トラックバック(0) | コメント(0) | ●三宅受け | 管理
|
この記事へのコメント投稿はできない設定になっています |