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『半分愛』(レヴィベル)ー2

「ナシでいいよ、あの話、王子血迷った。
 調子狂わせたかったわけじゃねーし」
「・・・」
ゴー、と車外、音に囲まれながら、
無言に潰されそうになる車内では、
逃げ道は無い。
目を開けるとじっとこちらを、
見ていた造作の良い顔が近く、
「おまえがわざわざ俺に構うのは何故だ」
「わざわざって何が」
「興味本位か何か知らんが、
 もう少しまともな相手を、
 探せばいい、俺は、
 不細工なんだろう、そのうえケチなんだろう、
 おまえを甘やかしもしないし、讃えもしない」
「だからいんじゃん」
「・・・わけがわからん」
「おまえの忠誠心が好き、ボスへのね。
 俺に向けられてない気持ちが好き、だった・・・。
 今はそんな惚れ方したの、
 呪ってる、・・・」
「・・・」
「よくわからないけど、おまえを、
 愛してるんだよ俺は、それが苦しい、
 王子誑かした罪で、
 いつかきっと殺してやる」
ぞっとするほど艶を持って、
湿った声が耳に残る。
赤い耳の、小さな頭と、震える肩、
熱い重みでさえも心地よくて困る。
特殊な人間は惚れ方まで特殊なのか、
「不運だな」
たまたま、俺が目についたのだろう、
ボスに忠誠する人間は無数にいる。
悪魔の言い草では俺ではなくても、
他のどの人間にも当て嵌まる条件。
「ホントだよ」
ただ、幸運と思う自分が恐ろしい。
俺に惚れた悪魔を不運と思うくせ、
気紛れな好意を向けられた自分を、
幸運と思う情けなさ。
「どうして惚れちゃったんだろね、
 おまえなんかに」
「まったくだ」
「・・・でも惚れちゃったもんはどうしよーもない、
 うしし」
(笑うな)
こちらを向きふんわりと、珍しく邪気なく、
笑う悪魔を可愛らしいと、思う自分が憎い。
「ベルフェゴール」
「・・・何?」
久しぶりに呼んだ名がぎこちなく、
向こうも向こうで固い声の返事で、
(ああ、もう駄目だ、ボス・・・!)
忠誠とは別に、まったく異質の想い、
愛に似た忠義を愛に見ている悪魔の、
判断が誤りだったと、自覚して寒気。
「ボスは尊敬している、
 おまえは愛している」
「・・・」
「俺の全意思はボスに向いているが、
 俺の全欲望はおまえに向いている」
ふと過ぎった不安。
悪魔の俺を好く理由に、悪魔を向かぬ意思があること、
覆してしまったその奇妙な魅力に、悪魔は俺に興味を、
削がれるのではないかと。
どん、と胸に当った悪魔の顔、
勢いよく抱き付かれたらしい。
「俺の?」
腕で俺を囲う悪魔の、表情が見えない。
「半分ならばな」
「ししし」
甘えた声、しかし渋い顔を作る。
「レヴィの誑し!」
「無礼を言うな!」


END



Thursday, 05, Jul | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ヴァリアー | 管理

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