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『グランツ』(イルロイ+グリザエ)-1

ザエルアポロ・グランツは悩んでいた・・・
数々の研究、数々の発明、失敗後成功、怖いものは無かった。
今まで、どうにもならないということ、など、無かったというのに!
(ああッ、あの、カス兄ッ!!)
顔面に手を当て沈み込む彼の眼前、
今まさに彼の兄、イールフォルト・グランツは奮闘していた。
「おい、おいディ・ロイ」
「・・・」
「ディ・ロイ!貴様!このカスが!」
「・・・」
「ディ・ロイ・・・」
「・・・」
「ディ・ロイ!!!」
「・・・何、」
彼此数えて6度目の呼びかけに、やっと振り向いたNO.16、
ディ・ロイは、出来損ないだったが、
時折見せる感じの良い笑いと、独特の軽快な雰囲気が魅力、
という分析結果の出ている(ザエルの中で)破面だ。
現在、イールフォルト・グランツが猛烈に気にかけている破面でもある。
「何、じゃないだろうカスが!!」
「・・・何デスカ」
「何デスカじゃない、何度も言ったろう、
 笑え!俺がまず声を掛けたら笑え!笑って振り向け!」
「・・・ハハ」
「違う!そういった引きつったものではなく・・・、
 ほら、アレだ!よくグリムジョーに向かってやる、アノ・・・」
「あ、グリムジョー、おーいこっちこっち」
それ、それだ!とイールフォルトの口が動いていたが、
ディ・ロイはまっすぐ(弾ける笑顔で)、
こちらにやって来る者、グリムジョーだけを見ている。
「おう、何だ、またてめぇら揉めてんのか」
回廊、ザエルの潜んでいる暗がりとは反対、
グリムジョーがずかずかと歩いて来るのが見えた。
「どうにかしてよイールフォルトの奴、わけわかんねぇの」
「あー?今に始まったことじゃねぇだろ」
「何かってと殴るし、一々注意とかして来るし、
 俺のことウゼェんならシカトしろよ、
 俺もなるべくおまえの視界入んないよう努力するからさ、
 あ、グリムジョーと居るときは別ね、
 優先順位ってのあるからね、
 おまえ居ても居なくてもグリムジョーの傍にだけは居させてもらうから」
「ディ・・・貴様・・・!」
「キモイな、どんだけ俺が好きなんだ」
「好・・・?!馬鹿言えカスはただ・・・!」
「キモイ言うなよ、酷ぇの。
 忠誠心だってコレ!他意はねぇよ」
「そう!そうだ!」
「俺、グリムジョー尊敬してっからさ」
「・・・そうかよ」
「憧れって奴な」
「・・・そうかよ」
「カ、カス、じゃぁ俺は何だ?!俺はおまえにとって何だ?!」
「いや、特に何ってわけでも」
「・・・!!」
「それよりさ、グリムジョーどうすんだよ、アイツ、
 声掛けんの?良かったら俺取り持つぜ!
 ちょっと怖い感じだけど、殺されねぇ程度にちょっかい出すぜ!」
「あー、や、何だ、別に・・・いい」
「何だよ何だよ、気になってんだろッ?!」
「アー、ま、そーだけどよォ、・・・何だ、俺はァ、
 いんだよ、・・・姿見れりゃー満足っつーか、
 ・・・アレだ、邪魔しちゃ悪ィだろ」
「オー!かっけぇー♪向こうさんの都合優先ってわけな!
 やっぱ恋する男は違ぇよな!惚れるー!」
「!!」
「茶化すんじゃねぇよ!」
「へへ・・・ブッ」
「カスがぁあ!!」
「ッ、・・・痛ッ・・・?!・・・ってめ!!
 だっからイキナリ殴んなっつーのこの狂牛!キチガイ!まじ痛ぇし!
 心の準備させろよ!こっちも慈善で殴られてんじゃねぇんだかんな?!」
「口答えか、カスのくせに!」
「カスって言うな!」
「カスカスカス!!」
「死っね馬鹿牛!ぜって何時か殺す!」
「黙れ、このカスがッ!カスがッ!カスがッ!」
(アアアー!!!!)
無遠慮、思い切りディ・ロイを殴り倒す兄を、
影にいるザエルには止める術がなかった。
「カスがぁあーッ!」
「おい止せって!」
「クソがァアア!!」
(アー!もぉー!兄さーん、馬鹿兄さん阿呆兄さんクソ兄さんッ!!
 そんなんじゃ・・・!アー!あんたがむしろカスだぁッ!!!)



Wednesday, 28, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●他CP | 管理

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