『グランツ』(イルロイ+グリザエ)-2 |
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| 救おう、救いたい、この気持ちを踏みにじる兄の暴走が、とても憎い。 「覚えてろディ・ロイ!このクソカスが!いつかブチ殺してやる!」 己と、血を分けた兄弟の頭が、あんまりにも軽かったこと、 そして、そんな軽い脳みそで、恋などを始めてしまったこと・・・ 血だらけ、よたよたとぎりぎり、立っているディ・ロイに向かい吐き捨て、 イールフォルトが去る。こちらにどすどすと近づいて来ていた。 「やぁ兄さん」 「ッ!!」 奇妙なポーズで固まり、後ろを振り返り、こちらを見て、溜め息。 「見ていたのか・・・」 「見ていたよ」 「笑え」 「クハハハハハハ!」 「笑うな!!」 「どっちなんだい」 「笑うな」 「オーケー」 「何の用だ」 「用ってほどでもないよ」 「・・・」 「好きなのかい?彼が」 「・・・」 「何故わざわざあんな出来損ない君なのかな、 いや、まぁいいよ、良かったら相談に乗ろうか?」 「いや」 「遠慮はいらないよ」 「・・・遠慮ではない」 さばさばと応答、取り付く暇の無い肉親。 何か2、3縋るように、会話を続けようと試みたが、 流されて終わる。 (アー、僕もやっぱカスかな・・・) 貼り付けた笑顔は、何の役にも立たない。 どうもこの兄弟は、目当ての人間には報われないようできているらしい・・・ 何事も無かったかのよう、去って行く兄の背を見送る。 (馬鹿らしい、どうしたというんだ僕は! もう兄さんなどどうでもいいじゃないか! 死ねばいいあんな男死ね死ね死ね死ね、 むしろ僕が殺そうか、何故僕は今声を掛けたんだ?! こんな惨めさを僕にお見舞いしてくれちゃって、 アア、・・・どうして幸せになって欲しいなんて、笑っていて欲しいなんて!! どうせすぐ死ぬだろうし僕が何したってあの人はカスだし、 もう本当死んでくれ、なるべく早く!) 目障りだ、と声を殺し呟く。 (気に掛かるじゃないか!!) 「兄さん・・・」 「兄さん?」 「ッ?!」 「兄さんって、えっと、イールフォルト、に何か、された、とか? あ、俺もよく殴られるけど、 あんた俺と違って強いし、へぇ、意外」 「君は・・・」 霊圧、が蝿すぎて気付かなかった。 「ディ・ロイ、NO.16」 ヒヒッ、と下衆な笑いをするので気分が悪くなる。 仲間内、素直な笑みを振り撒く姿しか、見たことがないので、 こうして第三者として会うと、 へらへらと底の無い笑みや、 ぎょろついた目が不気味な印象の男だった。 「あんさ、あんた、グリムジョーどう思うよ?」 「うるさい」 「え?」 「うるさい男、だと思うが」 「アー、そっか、そうだな、 エー、じゃ、もしあんたのこと、好きな奴いたらどうする?」 「・・・」 ピン、と一致したこの皮肉な巡り合わせ。 (まさか・・・) 「ものは相談なんだけどさー、 グリムジョー、あんたに気があるっぽいんだ、 で、その、良かったら、 ちょっと気に掛けてグリムジョーのこと見てやってよ、 あいつ、かっこいいぜ、それなりに、その、 まぁ見てると、わかる、と思う、 んで、もしちょっとでも良いって思ったら、 あんたから声掛けてやってよ、 なんてか、シャイなんだよな、 すーぐいちゃもんつけてあんたから逃げちまうんだァあいつ! あ、他のことにゃまっすぐなんだぜ、 ただ、あんたのことってなると、さ、 だから、えっと、よろしく」 「・・・」 驚くことはディ・ロイが、グリムジョーの心情を深く見通していたことだった。 調子の良いことを言っておいて、しっかりと本質を捉えていた。 「そんだけ」 去って行く細い背を見送りながら、 何度も、交換条件に兄に、都合を合わせてくれるよう頼みそうになっていた。 もし彼が兄に笑い掛け、兄を受け入れてくれたら・・・! ザエルは、そこまで考え首を振る。 拘りたくないと、思う癖、この様だ。 「アア、もう、本当に兄さんはカスだ、手の掛かる!」 震えと、笑みで顎が痺れた。
END
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Wednesday, 28, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●他CP | 管理
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