『王家の沈黙』(雲ベル)-3 42000hitキリリク※R16 |
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| 辱められて、爆発した心が悲鳴の変わり、 雲雀に対し弱々しく初めての口答えをする。 そこで今まで、ずっと雲雀には強く出れずにいた自分が、 いたことに気付いてしまいそれがまた憎らしかった。 「・・・」 「ティアラ返せよっ・・・!」 強く、戒めを解けと要求し、それがこの関係の、 終わりを迫っているという自覚はあった。 「・・・返せっ」 「ッ」 びくりと、雲雀が反応し胸が痛む。 「・・・嫌いだおまえなんか、泥棒!返せ!返せよ!!」 うめくように、発した自身の言葉にひっかかる。 それは不思議なことだった。 ベルフェゴールは雲雀を、嫌いではなかったし、 そのことに自覚があった。だから雲雀に対し、嘘をついたことになる。 嘘など、つくのはいつものことだったが、 しかし雲雀に対しては、絶対につくべきではないと、 何時の間にか思っていたのだ。 「ふぅん」 なので口端をあげて、苦しげに応答した雲雀に、 不安を覚えせっかく、新たに出そうとしていた罵倒を飲み込む。 「そっか、」 続く言葉を待ちながら、飲み込んだ罵倒が体内で、 さらさらと消えていくのを感じた。 「でも、残念だったね、」 「?」 「僕は君が嫌いじゃないから・・・ 君が、 僕を嫌いだとしても、 僕が、 君を嫌いじゃないから、 だから、」 そこまで、捻るように吐き出された言葉は、 途切れて、見れば雲雀は汗を掻いているようだった。
「僕等の関係は変わらないんだ、・・・だから」
「・・・」 「変わらないんだよ何も、」 「っ、」 目が何かの言葉、きっと肯定の意思を求めていたのだ。 「・・・何も、」 何て何て寂しいのか・・・ 「変わらないんだ・・・」 ひたすら、自身に言い聞かせるように呟く雲雀に、 声を掛けるのを忘れて、 ベルフェゴールは遠くを見ていた。
性根の、元の元からずっと傲慢な男の、深い悲しみだった。
自分本意で、感じている苦しみの、和らげ方を知らない。 ただ一言、一音でも、 求めればいい、それだけのことなのに・・・ 「おまえさ、」 何て何て近いのだろう。
「王様なんじゃないの」
呟くと雲雀は、怪訝に眉を上げた。 「・・・」 「だから、俺、逆らえないよ、 いくら王子でもさ、 王様には逆らえないよ」 「そう」 柔らかな笑みがまぶしくて、 (そんな顔もできるんだ) 何時の間にか開放されていた腕を、 雲雀の背に回す。 「・・・逆らえない」 息と共に、強く吐き出すと雲雀は泣きそうな顔になった。 言葉を、送ったベルフェゴールはこの時確信犯で、 王様がどんな言葉を、欲しがっているのか実はわかっていたのだ。 それは自分の、求めるものと酷く似ていたからで、 どちらも、情けなく臆病で悲しい心を、持っているからわかる。 「・・・移動、する?」 「そうだね」 頷き微笑み、そっと、身体を離してからこちらの、 衣服の乱れを丁寧に直してくれる、 雲雀の優しさに触れて、ベルフェゴールは思い出す。
(ああ、そうだ、あの時俺は、 置いて行かれていたのだ、用はザンザスによる綱吉への用で、 ただの付き合いで来たけれど、まだ松葉杖で、 ザンザスに手を貸してくれと頼めず、 誰にも助けを求められず、 一人ゆっくりとむくれながら、階段を降りていたのだ・・・)
「ほら」 整った衣服を見て、口元が綻ぶ。 「うん」 礼さえも言えない我侭な、王子である自分。 「お礼もらうよ」 「どーぞ」 何て、・・・似たもの同士、 何て居心地がいいのか。
END
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Thursday, 01, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●他 | 管理
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