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『人間時間』(三年後ツナザン+スクベル←雲雀)-6 ※R16

「おい・・・」
気付けばベルの頬を幾筋も涙が伝い、ただの殺す殺されるの場面ではないこと、
それが見て取れた。仮に、俺が殺されようとこいつは平気な顔をしている。
また自分が殺されることも、恐らく受け入れるだろう。
ただ今問題なのは俺が(誤解だが)ベルを疎んでいて殺そうとしている、
つまりは、俺に殺されるほど嫌われている、ということが涙の原因なのだ。
(何だ、こりゃ、何が何だ、わけがわかんねぇ、何なんだ、
 浮気とかの次元じゃねぇ、・・・何が抉れてる?)
「勘違い、天才君、君、嵌められたんだよ、敵に」
「雲雀・・・?」
完全に消えていた気配に、感心しつつ目をやる。
複雑な表情で、雲雀はそこにいた。壁に、寄りかかり天井を見ている。
「君らしくないよね、簡単な手だよ、
 変装くらい今時完璧にする業師はいるからね、
 君が夕方会ったこの男は、
 君を狙う刺客だろうね、
 君を油断させようと、・・・この男の姿に。
 僕が迫ったりしたから混乱してた?
 君は騙されてまんまと斬りつけられたんだよ、
 僕が、助けなきゃ殺られてたろうね」
「じゃあ・・・」
「君を嫌っているのも殺そうとしたのも、その男じゃないよ、敵の戯言」
「・・・何・・・だ、・・・そう、
 そっか、・・・うしし、うわー、騙された、くっそーッ」
「待て、そっちの誤解はともかく、
 こっちの誤解は解けてねぇぞぉ」
「?」
「・・・まぁ、この件も簡単なことなんだけど」
逡巡し、また溜め息、雲雀は今度はこちらをまっすぐ見た。
「その子寝ぼけ癖激しいんだよ」
「あ゛?」
「寝起きだといつでもああだ、相手が誰だって抱きつくし、
 何されても笑ってくすぐったがるだけ・・・僕が味しめるには持って来いでしょ?
 ただ、時々君の名、口にするから・・・、
 その子の中じゃいつも相手は君なんだろうけど」
「・・・」
「ちょッ、待て、何の話それ?俺今凄い恥かしい奴扱いされたよね?
 雲雀、嘘とか良くないよ王子がそんな・・・」
「そうだね、王子が寝起き襲われまくりは情けないね、ご馳走様」
「ッ・・・」
がくりと項垂れたベルの耳は真っ赤だった。
呆然としている俺を、雲雀は正面から睨んだ。
「いつも、囁かれるたび、君の名を聞くたび苦しくてね、
 だから僕は君を噛み殺す理由が欲しかった、
 でも、今回の理由は正当じゃない、
 いつか理由ができたらいつでも噛み殺すから覚悟してて」
「・・・そ」
(っちこそ闇に気ぃつけろ暗殺されねぇようにな)
と言おうとしてやめる。
ベルと何度も寝ていたくせ寝ぼけ癖に気付かなかった落ち度や、
何やかんやと色々世話になり過ぎていた。



Thursday, 01, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ヴァリアー | 管理

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