『人間時間』(三年後ツナザン+スクベル←雲雀)ー5 ※R16 |
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| 暗がりに気を張りつつ覚えのある場所を順々に探る。 額をスースーとさせるのは汗で、久しぶりに掻いた。 「ベル・・・!」 最後の頼みのように巡り付いたその場所に、 入るなり批難の視線を、浴びて戸惑う。 板前の小僧は、困ったように奥で笑っていて、 目の前、俺を睨むのは雲雀だった。 寿司屋は、丁度客が無くシンとして寂しげ。 「何だぁ?」 「何だじゃないよ、どういうつもり」 「あ゛?」 ビュ、と空を切り頬に当てられるトンファー。 「貴方が斬りつけるところを、見ていた」 「・・・?」 俺の不思議気な顔を見、雲雀はトンファーを仕舞う。 「覚えがないの?」 小さな声。 「何のことだぁ」 盛大に、溜め息をついた雲雀は俺から興味をなくした。 付いて来い、とは言われていないが後を追う。 病院、嫌な予感にこめかみがヒクつき、個室に着いた時は心音が煩かった。 「ちがうだろうと思ったよ、 どう考えても君じゃなかった、 ただ向こうは君と思わせたかったみたいだし、 彼は君だと疑わなかった、 でも考えてみれば、君が彼を斬る理由はないし、 ・・・でも君ならば良かった」 意味深、雲雀は語りながら、寝ているようであるベルに近づく。 俺は俺で横たわる恋人の、容態が気になり錯乱していた。 ぴくりと、ベルの手が動き、傍に来ていた雲雀に抱きつく。 俺は目を疑ったし、同時にそのまま目を伏せたかった。 雲雀が、顔を近づければその腕は首に回りキスが始まる。 いつも俺とやるそれと、そっくりのものだ。 わなわなと震える手を握り退室を試みて背を向ける。 「んっ・・・ン」 聞きなれた、あのくぐもった愛しい声。 「うン」 こちらの舌に縋るように触れてくる柔らかなベルの舌、 今の今まで俺のものだと思っていたあの感触が蘇り、頭に血が上った。 「う゛ぉおい!現行犯だなぁこれはぁ!」 俺に押され意外にもすぐに退いた雲雀を尻目、 朦朧としていたベルの頬を叩く。 「何・・・ッ?!」 驚いたのか間の抜けた声を上げたベルの腕を引き、 恐らく奇襲に遭ったのだろう身体を、労わることなく病院の便所へと向かう。 「スクアーロ?」 俺の、怒りに気遣っているのかベルの、控えめな呼びかけを無視する。 「身に覚えがねぇわけがねぇよな」 「・・・」 人の気も無いので便所には入らず、その前のベンチに奴を放る。 夜、病棟にはめったに来ないだろう他人を恐れる必要は無かった。 「おい・・・、まさかッ」 圧し掛かって来た俺の胸を、奴は焦ったように押し苦しげな息を付いた。 「待ッ、ふっざけんな、ここ、・・・アッ」 長い前髪の向こう、困惑顔。 やましさがなければ、全力で抵抗するだろうにと、 俺の憤りは増した。 「やめ、・・・無理、」 「何が無理なんだぁ!心変わりしたからかぁ尻軽野朗! ふざけんなはこっちのセリフだぁ!」 「・・・んッ!」 乳頭を擦り首に吸い付く。そのまま舌で舐め下る。 ビクリと持ち上がった腰の下、腕を入れそのまま背を擦ってやる。 「は、・・・ぁ、痛ッ、ア!」 「っ・・・」 怪我をしていること、それをわかっていて、 苦しめるつもりで抱こうとしている。 裏切られた悔しさ、捨てられた痛みをぶつけて、それからどうなる。 「何だよ、気ぃ変わったの?犯してから殺すことにしたわけ?」 絶え絶え、搾り出すような声が上がる。 「俺のこと殺すんだろ」 「あ゛?」 「本当はずっと俺がうざったくて油断させるために寝てたって言っただろおまえ」 (待て何の話だ?!) 一瞬、溜めた後、髪の隙間、涙目。 「いいよ殺せよおまえになら良いから、 おまえが俺のこと目障りで気味悪くて苛々する、ただの穴って思っててもいいよ、 でも俺残念ながら愛しちゃってるんだよねおまえのこと、だから・・・ッ、 殺せばいいじゃん、きっと良い声出せるよおまえのためなら、 血で狂っちゃうかもしんないから縛ってからにしろよ、 間違えて俺のほうがおまえ殺すとかシャレんならないから」 後半、濁る声で終えられた主張は完璧に何か誤解されている。
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Thursday, 01, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ヴァリアー | 管理
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