『タイプ』(ルスベル) |
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「ルッスーリアッ!!!」
高い声、普段は落ち着いた透き通った音で、 他の者を威嚇するそれは、 今は本当に子どもらしく、 華奢にキンキンと響いて来た。
「来て!早く!刺すよ?!」
「何よ?」
トレーニングルームで、掻いた一汗の爽快感に水を刺され、 ルッスーリアは不機嫌な声を出した。 腕を引かれ、連れ去られたベルフェゴールの部屋には、 ピンク色の包み。 「開けてみて」 「・・・」 中から、ルッスーリアの愛用しているものと似通った型のサングラスが顔を出し、 思わず型眉を持ち上げてしまった。 「何のつもり?」 「プレゼント、任務帰りにね、 寄り道して買ったんだ。だから今日は狩りできなかったんだよ? 俺、自分の楽しみがまんしてさ、買ったんだよそれ? 偉くない?褒めてよ」 「・・・」 溜め息、子どもの遊びだとばかり思っていた、 今の今まで、 それが、どうやら少しルッスーリアの思っていたより、 真面目なようである。 「偉いわよ、嬉しいわ」 「ホント?!やっぱり?! マーモンがね、プレゼントが基本だって言うからさ、 やっべマーモン秀才!マーモンに相談した俺天才!」 「でもね」 「ん?」 「あんた何度も言ってるけど私のタイプじゃないのよね」 「・・・うん」 「あんまりはしゃがないで、困るじゃない、 早く、私のことは諦めなさいね?」 「・・・」 さらさらと、 さわり心地の良い髪。頭上の王冠を避けて後頭部を撫でる。 頬を抓る。 「いいこと?坊や?」 「・・・誰が坊やだよ」 「あんたが」 「ふざけないでよ俺王子だよ」 「王子でも坊やよ、馬鹿な子、これありがと、大事に使うわ」
「・・・っ」
腕に、飛びつかれ目を向ける。 ぶら下がる子どもは軽い。 持ち上げるとそのまま持ち上がり、必死に筋肉に顔を埋める様が、 何だか滑稽だった。 「何やってんのよ?」 「馬鹿力」 「あんたが軽すぎるのよ」 「引き止めようとしたんだよ!!」 「あらそう、でも残念、 あんたごとシャワールーム直行だわ」 「シャワー?」 「汗流すのよ」 「ぎゃ、ホントだ汗臭い」 「今頃?」 「服濡れたッ!!」 「あらごめんなさいね」 「責任取って一緒にシャワーあびて」 「どんな責任よエッチ」 「バス付きのほうでさ、ゆっくり入ろうよ、 そしたら背中流してあげる!」 「あんた私と親子デビューしたいの?」 「ちがうよ恋人デビューだよ」 「・・・馬鹿ね」 「うん」 嬉しげ、呟かれた声に温かな、 心地がしたのは錯覚。 服を脱ぎ出したベルフェゴールを見つめて、 ああやっぱり駄目だわぜんぜん好みじゃないわあんなもやし、 と心中で呟きルッスーリアは息を付く。 それでいて安心するようなこの、想いは何なのか。 本当に愛すればその、死を望みたくなる性癖。 それが、 向かない喜びを確かに自覚していた。 「やっぱ好きになれないわ」 「うん?」 ニヤついた口元を隠す。 込みあがる笑みを不思議そうな、 興味深そうな顔で、 見てくるベルフェゴールに腕を伸ばす。 肩を掴み引寄せ、 口付けて間路かで囁く。 「でも襲うくらいには気にいってるわよ」 「・・・」 ばさりと、ベルフェゴールの手に握られていた衣服が、 おそらく放心した彼の意識に合わせて落ちる。 「なんて、冗談」 目を細め笑いかけると、 一気に沸騰した顔の赤さを、 可愛らしいと思う。 「こ・・・ッ、卑怯!嫌い!」 喚き、去って行った背を見つめる。 「あら?」 好きだったり嫌いだったり、 「・・・忙しい子ね」
END
「馬鹿!タラシ!」 喚き、上半身を晒して、大股で廊下を歩いて行くベルフェゴールの、 心中の荒波をルッスーリアが、 予想できるわけも無かった。
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Tuesday, 08, Aug | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ヴァリアー | 管理
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