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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



『誤魔化し』(ディノヒバ)

「おまえ友達いねーだろ」
「・・・」

つい言ってしまった。

「・・・」

返答はひたすら無言。

「恭也」
「・・・」
名を呼ぶと少し雰囲気が動く。
雰囲気だけが動く。
「生きてるか」
「生きてる」

屋上、夜、夜風、虫の声、
静か、星、横顔。

ぴくりとも動かぬ表情。

寝転がった背中がだんだん、
痛くなってきてるんだけどおまえは?
とか何とか言うつもりでうっかりと、

別のことを口走ってしまったのだ。

とりあえず誤魔化しをかねて笑う。
常に貼り付けている笑みで、
何も、不思議が無いことを装う。

つい、

で言ってしまったことがばれないよう、
何の他愛も無い軽口であることにする。



「いやさ、何ていうか、性格悪ぃーもん」
「・・・」

まずいまずい、何だろう俺、
何だろう今日、

少し調子が悪い。

「あなたは・・・」

ぼんやりと呟く雲雀に、意識を向ける。

「ん?」

何か言い返すつもりらしい、
戦闘マニアが一丁前にむかついたのだろうか。

「群れすぎ」
「おっとぉ」
「何?」
「そこが駄目なんだよな」
「駄目?」
「言ってること、
 口癖なんだろうけど、
 マンネリしててつまんねーよ、
 会話しよーぜ会話、
 俺が、
 「おまえ友達いねーだろ」
 っつったんだから、
 そこは、
 「友達に興味無いから」
 とか、
 「一人が気楽でいい」
 とか、
 「どうしたらできますか」
 とか、
 「何でそんなこと聞くんですか」
 とか何とかさ、うん」
「ばか?」
「ば・・・っ」
「馬鹿だね」
「ばっ・・・」
「どーでもいいよ、あなたの言葉なんて、
 早く回復してね、僕もあと2分あれば・・・」
「っ」

Q:おまえ友達いねーだろ
A:馬鹿だね

これ、
会話じゃねーよ絶対、
馬鹿はおまえだよおい。

「恭也」
「何」

制服を引っ張る。


詳しくは制服の襟首。


「・・・」
無言の瞳が俺を縛る。
逆に縛り返す。
「かまえ」
「は?」
「俺にかまえ」
「かまってるでしょ」
「もっとかまえ」


後ろで部下が爆笑。


「質問しろもっと、
 俺のこと知りたがれそして、
 
 俺にもっとおまえのことを教えろっ!」

「・・・っ」

目の前の表情が歪む。

(うさんくさそうに見るな)

「ってわけだ」
「ぷっ」

ぷ?

「あなた、恥かしい人だね」
「・・・っ」
(恥かしい人?)
「聞いてる、
 こっちがヒヤヒヤする」
「そうかよ」
「恥かしい」
「恥かしいか?」
「恥かしい」

くすくすと声が響く。

急に気が落ちる。
何か、
とんでもないことをしたような偉業を成し遂げたような。
「つかれる」
「年?」
「おまえ相手するとつかれる」
「あっそ」
笑いが鎮まりまた、静かになった屋上、
正面、楽しそうな顔、

苦しい。

向き合っても盗み見ても苦しい。

何か動きを起こして欲しくてそのくせ止まっていて欲しい。
目を向けて欲しくてそのくせ目を向けられると苦しい。
こちらに、
集中して欲しいくせ意識を、
本当に向けられると緊張する己。

中学生を相手に、

何をしているのか。

「ねぇ」
「何だ?」
「部下でしょ、あなたの、
 周りにいるの友達じゃないじゃん、
 あなたにだって友達いないんじゃないの?」
「・・・そうかも」
「あと、」
「ん?」
「あなただって性格、充分悪いから」
「・・・はは」
話し掛けた癖にあやふやな返事、
沈黙が続く。

(俺らしくない)

「キスしていいか」
「・・・」

驚いた顔同様した目。
「今なら二人」
部下が、
手洗いに立ったのを目の端に見えた時から、
このセリフを用意していたのだろうか。

ホントは、

そろそろ開始しようかと言おうとしたわけで、
「恭也」
「だめ」
「何が」
「だめ、ふざけないで、噛み殺すよ?」
「本望」
近づけた顔染まった頬、
中学生を相手に、

何してるんだかと心中、

恋してるんだ犯罪、スレスレの恋をしている。

「っ」
「・・・」

触れただけでまったく、
色気の無いもの。
若い若いキス。

「恭・・・」
「ばかじゃないの?!」
「ぐっ」
腹に決まった一発。
「本当にやってどうすんの、何考えてんの?!」
「痛い」
「これからもっと痛くしてあげるよ」
「怒ってんの?」
「・・・っ」
「あ、もしかして照れてる?」
「っ」

ひくひくと口元。

つい、してしまったそれにこれから、



どう誤魔化しを入れよう?



END


オフの子の影響でディノヒバ。

雪合戦の回(かなり前だな)の雲雀さんが出るタイミングとか見計らってたら可愛いねと言う会話をしてうっかり雲雀受けが書きたくなりました。

このまま影響され続けるとあれです、
最終的に夏○漱石の『こ○ろ』の書生×先生とか書き出す勢いです。



Sunday, 09, Jul | トラックバック(0) | コメント(0) | ●他 | 管理

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