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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



『罠』(スクベル)  ※R16

共同の部屋のソファーの一角。
「そこどけよ」
「あ゛ぁ?」
「どけ」
我侭王子の気に入りの場にたまたま、
腰を掛けていた己、の、不運。
「どけ」
「・・・」
「どけ」
「・・・」
「・・・」
「・・・?!・・・っ、おいっ!」
慌てた声を上げたのは俺でまさか、
座っている俺の上に座ってくるなんてことを、
予想していなかったわけで、
「・・・っ」
「ちょっと疲れてんだから静かにしてよ」
「どけ」
「やだ」
「どけ」
「やだ」
セリフの逆転、唯でさえ意識を向けている相手の、
思わぬ接近に心臓が悲鳴を上げる。
「どけ、・・・どいてやるから」
「もう遅いよ、俺腰重いの、王子だから」
「いい加減に・・・っ」
「うるさい」
こちらを見上げて、噛み付くように声を出す。
口元に手を当て、「しー」なんてふざけた仕草。
「いい子だから、静かにしてて」
「・・・誰がいい子だぁ」
出るのはうめき声で、
先程から激しい音を立てている心音に気づかれているのかいないのか、
それが気になり手に汗が溜まる。
悔しいことに目の前の、悪魔が愛しい己の心を知っている。
だからもちろんこちらから、その身体に触れるなんてことには気恥ずかしくて抵抗があり、
握り締めたままの拳を馬鹿のように、ベルフェゴールの乗る胴から離して、
不自然なポーズで固まってきょろきょろあたりを伺う。
恐る恐る小さな肩に触れてみると、
ことりと、頭が下がる。
「・・・」
「・・・」

・・・

・・・まさか。

「おい!」
「・・・」
「ベル!ベルフェゴール!」
「・・・」

・・・


揺する、叩く、抓る。

「熟睡かぁあ゛あ゛ぁ?!」
叫ぶ声が虚しく部屋に響く。
「うぉ゛おい」
「・・・ン」
「っ」
「んん・・・」
こちらの胸に、全体重を掛けてとろりと、
溶けるように眠る悪魔を前に本能が騒ぐ。

(チャンスか?!)

寝込みを襲う、ということにまったく抵抗は無い。
相手が相手だ。
(チャンスなんだな?!)
そっと髪に触るとさらりと流れ、
桃色な思考回路が、さぁと脳内に広がる。
「よし」
改まって細い腰を確認するように掴む。
引き寄せてうなじに口付け、
シャツに手を入れ腹筋あたりを撫でる。
「ぅん・・・」
反応が行動を触発、
だらりと垂れている足の内腿を摩り、
そっと中心に触れようとしたその時、
「当たってんですけど」
突然はっきりと耳に届く、
さきほどまで都合良く漏れていた甘い響きは無く、
それはもう心底、楽しそうな、声。
「尻んとこにさー、何かあるんですけど」
「・・・っ」
涙が切れて声が出ない。
振り返ったベルフェゴールの、
凶悪な笑みに寒気。
「どーしちゃったのぉ?お元気ですねぇー?」
言葉の刃が刺さる。
「ねぇ・・・」
笑いを含む声。

嵌められた。


すっかりその気である自身を持て余して半ベソ。
「おい、頼む、やらせろ」
「やだ」
「うぉお゛い・・・っ」
泣きそうな声が出て焦る。
あまりに情けないのでそれ以上、
言葉を発するのをやめた。
「うししし」
「笑うな」
「最高」
「最悪」
オモチャのような扱い。
足取り軽く去っていく後姿に、
鬼、と呟く。

END



Saturday, 12, Aug | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ヴァリアー | 管理

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