『お気に入り』(イルウル←ヤミ、+グリロイ)―2 ※R16 |
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「ディ・ロイ!どこだっ!ディ・ローイッ!!!」 ひと気の無い通路でグリムジョーが叫んでいる。 その背に人影が近づき、気づいたグリムジョーが期待混じりに振り向く。 「ディ・・・」 「なんだまたはぐれたのか」 「っち、んだよてめぇらか」 悠然と立つウルキオラの背にヤミーが控えている。 「逃げてるんじゃねぇの?おまえから」 「・・・あぁ?」 「嫌われてんのかもな?」 ウルキオラの背からヤミーがニヤニヤとした顔でからかいを入れる。 「そ・・・っ」 ショックの余りグリムジョーが固まる。 「・・・なわけねぇだろぉ、ねぇよそんなことっ!死にてぇのか!」 「っクク、余裕ねぇなぁオイ」 「くっそ!」 「あまり束縛してやるな、ディ・ロイが可哀想だ」 「あぁ?」 「おまえは愛する者に息苦しい想いをさせて、おまえはそれでいいかもしれないが、それで・・・」 ふとウルキオラの顔色が変わる。 「迷惑かも、しれない、だろう、向こうは・・・こちらの、自己満足を押し付けられて・・・」 途切れ途切れ、言いながら苦しそうに顔を歪める。 「何だ?」 「おい、どうしたよウルキオラ?」 「俺は・・・」 呆然としたような顔で、ウルキオラは立ち尽くした。 顔色はみるみる青ざめて行く。 心配そうにヤミーが、覗き込もうとしたその時、 ウルキオラは駆け出した。 「おい!」 「着いて来るな」
暗いじめりと湿気った角の中から複数、 影が顔を覗かせ、 ふと偶然居合わせたウルキオラを見て固まる。 「・・・っ」 青ざめ後ろを向いた先頭のその男は、 角の中に向かい何ごとかの罵声を吐いている後ろの者たちを窘め、顔を隠すように走り去って行った。 「?」 不審に思い角を覗く。 「あー」 この声。 「ウルキオラじゃん」 先ほど、とまったく変わらぬ調子で、 しっぽでも振っているのかと思う声色。 姿を探す。 「ここ、ここ」 足元、 転がっているディ・ロイの姿は無残で思わず息を呑む。 「悪いけどさ、手ぇ貸してくんない? ちょっといつもより数多くて動けそうもないんだよね」 妖艶、とも言えたんじゃないかと思う。 汗ばんだ首筋の信じられない細さと、 からかいで放られたような脱ぎ捨ての袴で隠れた下半身の、 ふと覗く腿に赤く、残る複数の手の跡。 強く抑え付けられたのだろうくっきりと目立っている。 ところどころに、普段は衣服で隠れる場所ばかり、 痣の出来た体をだらりと力無く開いたまま、 ディ・ロイは人懐こく笑っていた。 「何が・・・」 「はは」 「・・・ディ・ロイ!」 「ちょっと遊んでやっただけだよ」 「嘘をつけ」 薄っぺらなディ・ロイの笑みの、唯一感情を持った瞳が、 確かに怒りと悲しみを訴えているのだ。 「はいはい、 うん、 ホントは遊ばれちゃったの、 俺に主導権は無かったです。 でも次は頑張ってあいつ等尻に敷いてやるよ」 「っ」 (次?) 「・・・」 「おまえは・・・」 そこで無理に身体を起こそうとしたディ・ロイがうめく。 「痛ッ」 「おい」 駆け寄り支える。 ディ・ロイの身体の下から、生温かな白濁の液体が流れ、 思わず眉間に皺を寄せた。 「悪いね、キタナクて」 「・・・おまえは悪く無い」 「・・・」 「おまえは被害者だ」 「・・・そうかな?」 「ディ・ロイ・・・」 つんと、 何かが唇に当り数秒、それがキスであったことがわかった。 「あーあ、ウルキオラ好きになれば良かった」 「・・・」 起き上がるのを諦めたのかディ・ロイはごろりと地に寝そべる。 「あのさ」 「なんだ」 「・・・」 言い辛いという顔をして、ディ・ロイは鼻の頭を掻いた。 「これね、俺がさ、わざとしてることだから、 あんまね、心配とかいいから」 暗く湿った角で、剥き出しの肩が痛々しい。 疲れきった顔をしたディ・ロイの声は掠れていた。 「ずっとさ、グリムジョーの横にいるにはさ、 こういうの必要だから・・・」 「・・・どういう?」 ウルキオラの心底の問いにディ・ロイは苦い表情を作る。 「俺のこと嫌いだったり、気に食わないと思ってる奴に、 ずっと俺を見下しててもらわなきゃ、駄目だから、 いつか、引き摺り落とされないようにするには、 俺の、あの位置、グリムジョーの隣、 俺は実力であそこにいるんじゃないから」 「・・・」 息を吐きウルキオラから目を逸らす。 ディ・ロイの咽喉が一瞬震え、言い出しの言葉が濁った。 「俺のこと犯して殴って・・・ なじったり、そんなことだけで気を晴らしてくれる。 ・・・安いもんだろ、 ちゃんと俺が下の存在だってわかる瞬間、 それがあるだけであいつ等は満足できて、俺は安全でいられる。 いつか殺される心配も貶められる心配もしなくて良くなる。 ずっと、・・・あの場所にいられる」 「ディ・ロイ・・・」 「何だってやる、俺は、ずっとあそこにいたい・・・」 「おまえ・・・、まさか定期的に自ら、 ふらふらと危険な場をうろついて?わざわざ、絡まれに行っているのか? そんなこと、グリムジョーが知ったら・・・」 「何、チクるの?」 突然ディ・ロイの顔が険しくなりたじろぐ。 「・・・」 「俺ウルキオラ好きだよ、強ぇし優しいし頭いいし、 でも、ちょっとお節介なトコたまに傷だよね、 俺は、こうやってあの位置を、あの場所を守ってるんだから、 それを邪魔するって、俺の意思をねじ伏せるってことだよ」 「だが・・・」 (苦しくはないのか?) 詰まり、発することのできなかった問いは音を持たず消えた。
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Saturday, 08, Jul | トラックバック(0) | コメント(0) | ●他CP | 管理
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