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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



『お気に入り』(イルウル←ヤミ、+グリロイ)―3



一言、グリムジョーが探していたということだけを伝えてウルキオラはディ・ロイの元を去った。
目的の人物の元へ足を運びながら何度も、ディ・ロイの言葉はウルキオラの腹の底を摩った。
「イールフォルト」
呼ぶと少し驚いた顔で、イールフォルトはこちらを向き、
騒音の少ないその部屋で同じく、じっとしていたシャウロンはそっと席を外した。
(いらぬ気を・・・)
部屋に入ると思ったよりもさらに静かで、
「何の用だ」
掛けられたイールフォルトの声が凛と耳に響いた。
雑念が吹っ飛ぶ。
「・・・」
・・・顔面に熱が貼り咽喉が渇く。言葉が出ない。
「ヤミーはどうした?」
「いない」
「いない?」
怪訝そうに、イールフォルトはきょろきょろと辺りを見回す。
「本当に一人か」
「ああ」
「・・・」
「おまえに、謝りたいことがあってな」
「?」
「俺は・・・」
言い掛け戸惑う、毎日の奇行の、理由、それをどう説明すればいいのか。
「迷惑をかけた」
「・・・?」
「迷惑をかけた、俺は、俺の勝手な意思で、おまえに、
 迷惑を、かけた、謝りたい」
「・・・」
頭上に何かが置かれ、それはイールフォルトの形の良い手だった。
そのまま、何度か撫でられ目が回るかと思う。
ウルキオラの目と合わせるために下を向いて来たイールフォルトの、
真っ向から見えた美しい顔に息ができなくなるほどの衝撃を受ける。
「おまえは強い・・・
 だからおまえの意思は、俺たちの自由を奪う力を持ってる。
 この世界には平等は無いが、無限の自由がある。
 誰もが、己の可能な範囲、自由に、自分勝手に生きてる場所だ」
「・・・」
手を離し、イールフォルトは笑う。
「たびたび、強い力の者の自由は、弱い力の者の自由を奪う。
 それでも、できる限り、強者も弱者も己の力の限り、好きなように、
 思ったように生きてる。
 そこに力の差、不平等があっても・・・」
「・・・」
『ウルキオラとヤミーって、いっつも一緒だよな』
ディ・ロイのあの時の言葉、
暗にあの言葉がふと、何の苦労も無しに共にいられるということへの、
少しの皮肉と妬みがあったんじゃないかと思った。
「・・・弱者は妨げられる運命、
 それでも、
 強者の中に時に、
 弱者を労わる者があれば弱者は幸せになれる。
 おまえのような強者が増えれば、
 ここはもう少しだけ、
 弱者にとって居心地の良い場になるだろうな」
「・・・」
心底、清いものを見るような目でイールフォルトはウルキオラを見つめた。
(誤解だ・・・)
ウルキオラは自分の、気に入ったものにしか優しくは無いのだ。
ウルキオラができた強者なわけではなくイールフォルトやディ・ロイが、
もって生まれた力でウルキオラに気に入られたのだ。
「イールフォルト」
「何だ」
「俺は単におまえが好きなだけだ」
「・・・?!」
「おまえを、好きだからおまえが、
 嫌だと思うことをするのに気が引ける、
 おまえが、苦しい時全力で助ける」
「・・・」
「好きだ」
「・・・」
がしりと、肩に衝撃を感じ抱きしめられたことに気付いた。
「だったら、どうして俺を避けていた」
「?」
「いつもいつもあの男を介入させて、
 俺は、ずっと嫌われていると・・・」
さらりと、イールフォルトの髪が頬に当る。
「イールフォルト・・・」
「本当に、俺のことが好きか」
「好きだ」
「証拠は」
「・・・見ればわかるだろう」
「?」
真っ赤に、染まったウルキオラの顔を人目、
見るとイールフォルトはくしゃりと顔を歪めた。
「言ってもいいか」
「何をだ」
「可愛いな」
「・・・っ」
「可愛い、おまえは小動物のようだ」
「なら・・・っ、こちらこそ言わせて貰う」
「何を」
「美しい、おまえは、まるで美術作品だ!」
「・・・」
互いに褒めあうという趣味の悪いことをしてしまい二人、
下を向いて恥かしそうに顔を逸らした。
「美しく可愛らしいカップル」
ぼそりとイールフォルトが呟き。
「美しく可愛らしいカップル」
ウルキオラが復唱して笑う。
「イメージはそんな感じか」
「ぴったりだな」


「キモ」


グリムジョーが呆然と二人を見つめて呟く。
「グリムジョー?!」
イールフォルトがこの世の終わりのような顔で声を上げて、
「いたのか」
平然とウルキオラが声を掛ける。
「キモ・・・」
二度目の中傷が入りどんよりとイールフォルトが沈む。
「事実だろう」
ウルキオラは何を恥じると言わんばかりに主張し、
そんな恋人の口をイールフォルトは必死に掌で覆いそそくさと退散する。
その後姿を見送るグリムジョーに声を掛ける者がいた。
「んじゃ俺たちはえろかっこいいカップルかな」


『お気に入り』(イルウル←ヤミ、+グリロイ)―4



「おまえっ!」
探したんだと言う言葉を飲み込み抱きしめた。
「どこ居たんだよっ!
 ・・・どうして俺の傍離れんだよ」
憤り、疑問、思うようにならないディ・ロイへの不満が、グリムジョーの心内を巡る。
「・・・離れたくないから離れるんだよ」
「わけわかんねー」
「わかんなくていい」
呟く声はどこか甘い響を持ってグリムジョーを惑わす。
「・・・してもいいか」
「駄目」
「んだよ、いいじゃねえか」
「駄目」
「・・・」
この駄目の一点ばりは、本当に嫌だと言うディ・ロイの意思で、
その意思をグリムジョーは極力聞くようにしていた。
ディ・ロイを大切に思う、だからディ・ロイの意思を立てる。
「グリムジョー」
「あぁ?」
「好き」
「・・・」
「好きだ、好き、グリムジョーが大好きだ」
「あぁ」
「ずっとグリムジョーの傍にいたい」
「ディ・ロイ・・・」


大体、姿を消して戻って来たディ・ロイはいつもこんな様子で、



この状態のディ・ロイをグリムジョーは気に入っていた。


END



Saturday, 08, Jul | トラックバック(0) | コメント(0) | ●他CP | 管理

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