『鼻血』(ザン←スクベル) |
|
|
「鼻血」 「・・・」 言うと一瞬怯み、それから睨んできたスクアーロにざまーみろ、 なんて思ってしまったのはなぜか。 「ボスにやられたわけだよねぇ?」 「・・・黙れ」 「・・・」 会話のきっかけを作る言葉にしてはあまりに核心に触れすぎたのかと思う。 (なんで会話なんて作ろうとしてるのかも疑問なんだけどね) 「かっわーいそー、スクアーロってば褒めてもらえると思ってたのにね、 どうしてわかってくんねーんだろうね、嫌な奴だね」 「・・・」 俺の、意思と関係なく俺の口は滑り続ける。 「・・・消えろ」 「・・・」 取り付く暇なんてあったもんじゃない。 ざまーみろ、なんて・・・
「ね」
「またいやらしいことしよっか」
思ってしまうのは気づいてしまったからだろうか・・・
「・・・あれは事故だ」 「えー?」 「たまたま、・・・そこにおまえがいたから」
・・・
「ひでぇ~、八つ当たりとかの類だったんだアレ」 「ああ」 けろりと、言ってのける憎らしい口をどうすればいいのか。 「・・・うっかりその気んなっちゃったじゃん俺」 (あーもー) 「なんだそっかぁ、そーだよねぇスクアーロは突っ込んだだけだし、 感じてたの俺だけだったしぃ」 口端、がひくひくしてる感じ。 (笑うのをやめてしまおうか) 「・・・」 「あ~あ、馬鹿見た」 「・・・」
知ってるよアンタは、
ボスが好きなんだ・・・
「でもまぁいっか」 (よくない) 「そんなにマジだったわけでもねぇし」 (嘘・・・)
「ボスとお幸せに」
「!」
(・・・あ) 「・・・てめぇ」 かっと赤くなったスクアーロの、その反応が俺の胸を刺した。 「・・・気づいてたのかよ」 「だって・・・」
何度呼んでも俺を、見なかったじゃないかアンタは・・・
「だってさァ・・・」 いつもいつもその目線の先にはあの人がいたから。 ぽろぽろと何か、生暖かいものが頬を伝って、 「なんだよ、ボスが好きならボスとシろよ」
・・・始めからわかっていたけど、
知っていたけど好きだった。
俺のことを見ていないアンタに俺は何ができるんだろうかと、 そんなことばかり考えて、 だから・・・ 「・・・」
だから・・・
「事故って、何ソレ、もう絶対慰めてなんかやんねー、 馬鹿みたいじゃん俺ッ」
(あーあーもうどこの馬鹿女だよ信じられんねぇ皆死ねよ殺してやる)
伝う涙の温度が嫌に熱くて、 頬が火照る。 「・・・ヴぉい」 スクアーロの手がティアラに、そっと触れたのが分かった。 「・・・凝った細工だなぁ」
(何ソレ・・・)
「・・・」
(言うのそれだけ?謝まるなら謝れよウザがるならウザがれよ) (前者でも後者でももうどっちでも良いよ) (最低でも人並みの思いやりがあっても、やっぱりアンタは、 あの人がスキなんだろうからどっちにしろ同じだ・・・)
「っく、そ・・・」
涙が溢れるのを止められずもうどうすればいいのか、 わからなくて頭が白い。 こんなにふうに取り乱すなんて思っても無かった。
顎に皮の手袋の感触、 それでも体温の沁みた生暖かさを感じる。 「・・・んっ」
血の味。
「・・・」 くるりと、すぐに背を向けてしまったスクアーロに向かい呟く。 「なんだよ鼻血口ん中に入ったままキスとかすんなよ」
(・・・なんでこういうことするかな)
何時の間にかスクアーロは歩き出してしまっていて、 引きとめる言葉を咄嗟に考えたが何も浮かばなかった。 「・・・」 「あ・・・」 意味のない音のような言葉で縋りついた。
「なんだぁ?」 「・・・や、その・・・」
すぐに、
振り返ってくれたことがただ嬉しくて口ごもる。
「俺ってばスクアーロの鼻血の味見させらたわけ?」 「・・・お味はどうだよヴォい」
「苦まずい」
・・・ふっと、
やわらかく口端を上げて、それから、 去って行く後姿に肩の力が落ちる。 (・・・どうすればいいわけだよ)
(笑った・・・)
顔に、熱が集まって来ていて悔しい。 まだ口内に残っている血の味をなぞった。
(なんで、そういう行動とるかな・・・)
届かないあの人を見る自分と、 届かないアンタを見る俺を重ねて、 同情でもしたんだろうか・・・ それとも、
俺の、アンタへの想いを許すと言うことだろうか。
「にゃろーぜってぇタラシだ」 長い髪に隠れた背中はもう遠のいてずっと先、 まっすぐ迷い無く歩を進めていくから早い・・・ 涙を拭いて赤い顔を冷ましてから追うんじゃきっと、
追いつけないだろうね・・・
END
| |
|
Tuesday, 25, Apr | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ヴァリアー | 管理
|
この記事へのコメント投稿はできない設定になっています |