『下校』(了雲) |
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「ぬ!見ろ、夕日が美しいぞ」 「寒い」 「何がだ」 「セリフが、君の」 よく帰り道に顔を合わせていたその男は、 最近まるで約束でもしてたのかと思われるような親しげさで、 こちらを同行者のごとく扱ってくるようになって、今日も、 なぜか隣に当然のごとくいる。 「うむ」 (何がうむなの) 「美しいものを美しいと言って何が悪い」 (寒い) 急な坂道、山を登るためにある車道の横の細い歩道、 すぐ横の迫ったフェンスの向こうには目が痛くなるような緑。 笹川、了平・・・ 調べてしまったその名を心中で呟き空に目をやる。 「・・・これは一番じゃないよ」 「?」 「そこのビルで少し隠れるでしょ」 「む、確かに」 「完璧な夕日はね、ただ一つ、学校にしかないんだよ」 「なるほど、屋上か」 「そう、よくわかったね」 「よくいるからな、おまえが」 「・・・」 「気が付くと探してしまってな」 「・・・何それ」 「気が付くとおまえの帰る頃の、頃合を計っていたりする」 「何それ」 「よくおまえを目で追ってる」 「・・・」 「好きかもしれん、おまえを、・・・すまん」 「・・・」 言葉を、思いついたままに口に出してしまうその男は、 初めて少し、
後悔したような顔をした。
「すまん、言うつもりはなかった」 「うん」 「すまん」 六月、じっとりした空気が漂う。
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Thursday, 20, Apr | トラックバック(0) | コメント(1) | ●他 | 管理
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尻切れ
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| うわぁ凄い尻切れトンボに。 了雲で青春やりたかっただけなの。 すみません。
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by むー | Saturday, 20, May
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