『抗議』(ディ・ロイ総受け)― 1 キリバン7000hitリク |
|
|
「差別だ!それって絶対差別だ!」 年長者のシャウロンに呼び出しを食らい、 皆の集まる場の片隅、ディ・ロイは激昂していた。 「苦情が来ている」 言ってシャウロンは一枚、 きっちりと胸元の隠れる服を取り出した。 「でもグリムジョーは・・・っ」 「彼は見苦しくない身体造りをしている」 「おっ・・・ 俺のは見苦しいっての?」 悔しそうな泣き声が上がりシャウロンは焦る。 「まぁつまりは、そんな所だ」 「苦情って、誰が言った?」 「は?」 「とっちめる」 「・・・」 目を少し潤ませて低い声を出すディ・ロイに、 シャウロンの心情はぐらついた。 「仕方無い、解決策を教えてやろう」 「え?」 どうも自分はディ・ロイに対し甘い。 「ここに一枚の書類がある。 苦情を唱えた者達の名簿だ」 「・・・」 「一人一人回って、 取り消しを求めればいい」 「シャウロン・・・」 感動したような声を上げたディ・ロイに、 ゆるやかに微笑み、そっと頭を撫でてやる。 「お父さんみてぇ」 「お父・・・っ」 どこで覚えてきたのか無邪気なセリフを吐くと、 ディ・ロイはシャウロンの元を去って行った。
「断る」 狭い通路のど真ん中でヤミーをバックに、 ウルキオラはきっぱりと発言した。 「取り消しなど・・・ 来る日も来る日も署名のために動き回った、 俺の苦労を無にする気か」 「・・・」 名簿の一番上にでんと居座っている彼は、 この名簿を完成させた張本人のようだ。 あまりに意外な、 諸悪の根元を見つめディ・ロイは首を傾げた。 「どーして・・・」 常に我関せずの姿勢で、冷えた空気を身に纏う。 それがディ・ロイの持つウルキオラのイメージだった。 「あー・・・ ・・・冷える」 「え・・・」 「腹とかが冷えると思ってな」 「・・・そんなの、 ウルキオラが気にすることじゃねぇじゃん」 「なんだと?」 「大丈夫だって」 「駄目だ」 「俺、現世の奴等とは違うし」 「・・・」 「だから取り消し・・・」 言い掛け言葉が切れた。 正面から抱きしめられてディ・ロイは息を呑む。 「おまえは本当に馬鹿だな」 耳元で呟かれおかしな気分になった。 ウルキオラの禁欲的な肩が、間近にあり絶句。 人と関わることの少ない孤高の実力者であるウルキオラと、 こんなに接近するのは初めてだった。 「あの・・・」 言いかけたセリフがぎゃぁという悲鳴に変わる。 ウルキオラの手が尻を掴んだのだ。 「おい、道の真ん中で堂々とセクハラっておまえよ」 「うるさい」 ヤミーが遠慮深げに声を上げて、 ウルキオラとディ・ロイを引き剥がした。 「見ろ、放心してんじゃねぇか」 ウルキオラに尻を掴まれるなどというまさかの事態に直面し、 ディ・ロイは固まってしまった。 「・・・こいつが俺の思いやりを理解しないから腹が立った」 「あのなぁ」 切れやすい若者のような言い分だ。 「ディ・ロイ、俺は、おまえのためを思って・・・」 「・・・う・・ん」 「・・・」 呆然としたようなディ・ロイに、ウルキオラは溜め息をつくと一言、 かせと吐き捨て自身の名に取り消しの線を入れた。 「・・・え?あ、ありがと?」 「いいか、よく周りに注意して動け、 実力が伴わぬ者がむやみやたらに、 ・・・色気を振りまいて無事でいられると思うな」 「は?」 「・・・酷い目にあったら俺に言え」 「・・・うん」 「わかったな」 「・・・うん」 恐らくわかっていないあやふやな顔でディ・ロイは頷く。 「・・・」 そうして去って行くディ・ロイの背に向かいウルキオラは誓った。 ・・・この手はしばらく洗わない。
| |
|
Monday, 15, May | トラックバック(0) | コメント(0) | ●他CP | 管理
|
この記事へのコメント投稿はできない設定になっています |