『猿』(グリウル) ―1 |
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「おい」 なんて声を掛けて、 「なんだ」 という返答を貰う。
そこまではいい・・・
「スカしてんじゃねぇ」 「低脳」 ・・・嫌なやりとり。 道端、すれ違い様に声を、 掛けてしまう自分言葉を交わしたい自分。 「んだコラ」 「落ち着け、冷静になれグリムジョー、 喧嘩を売る相手を明らかに間違えているぞ死にたいのか」 「・・・っ」 むかつく、 から睨む。 睨んでも返って来るのは冷たい、 見下す用途にしか使われない瞳。
焦る。
戸惑う慌てる。 そんなふうな目を向けられたかったわけではなくて、 ただ・・・ 「猿」 「・・・っ」 「言い返してみろ容赦しない」 「てめぇ」 「・・・酷く不愉快だ」 「っ」 そうやって俺の株がおまえの中でどんどん、 下がっていくことがやりきれない。 「もう俺につっかかるな、迷惑だ」 投げられる言葉は重い。 深く深く刺さる。 (ちがう、俺は・・・) 伝えたくて伝わらない、俺の、 ぐちゃぐちゃした内部をわからないおまえが憎くて、 「気にくわねぇ」 血が上り口癖のように、 「死ね」 吐き捨てて後悔。
目の前に現れた何も読み取れない、 ぽっかり、何かに穴が空いたみたいな表情。
が恐ろしくて、 俺は、自分の言葉に大概、責任の持てない奴で言ってから後悔。 猿だ。おまえの言うとおりは俺はまるで猿のようだ。 「・・・」 言い返す、こともなく去る肩を掴みたくて腕の、 神経がただそこだけが利口にピクリと、反応し俺を奮い立たせた。 「ウルキオラ!」 咄嗟に呼び止め、 けれど上手く言いたいことなんか出てこず、 (ちがうわかれ頼む俺は・・・) 心中で呪いのように呟き、 「何とか言えよ」 (わかれ・・・) 「・・・」 「何とか・・・」 (わかってくれ俺はただおまえのことが・・・) 「おい・・・」 (気になってどうしようもなく気になって仕方なくて・・・) 「ウルキオラっ!!」 (ただただもっとおまえと向かい合って言葉を交わしたいだけで、 本当はこんな抉りあうような言い合いじゃなくて俺は・・・) 「言え、何とか言い返せよこの陰気ヤロー、死ね」 「・・・」 (俺は猿だ・・・) 「ウル・・・」 「おまえこそ死ね」 「・・・」 初めて、そう言えば本当に初めて、 言われた言い返されたその言葉に、 顔面が激しく引きつる。 (おまえ俺に死ねなんて思うのか) 「・・・っ」 さんざん、投げかけた言葉なのにいざ同じものを、 返されてそこで一丁前に傷ついて、 (死ねと思うほど俺が邪魔か) 馬鹿みたいに、・・・猿みたいに、 言葉を失う。 「死ねばいい、死んでしまえ、不愉快だいつもいつも、 俺の何が気に入らない俺だっておまえのことは気に入らない、 不愉快だ、 俺が何をしたおまえに、 ・・・いいかげんにしろっ」 「・・・」 「おまえなんか死ね、消えろ」 「・・・俺は 」 「死ね」 「・・・っ」 逆上、殴りかかって、 ・・・手ごたえ。 (!?) 避けると避けられると当然避けると、 思って、 (・・・っ) 「ウルキオラっ?!」 「っ痛・・・」 「・・・ーっ」 呆然、己の手を砕こうかと思った。 「嘘だろ」 「・・・」 「悪い・・・、悪い悪い嘘だ、ちげぇんだよ俺は」 「痛い・・・」 ひやりと、背筋を嫌なものが伝って、 何を言われたよりもどんなふうに冷たく見下された時よりも、 悲しくて惨めだった。 「悪い」 (こんなことを・・・) 「・・・ ・・・こんなつもりじゃ っ、 ・・」 (なくて・・・)
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Monday, 24, Apr | トラックバック(0) | コメント(0) | ●グリウル | 管理
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