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『察知能力』祝22巻記念ヤミウル― 2


切羽詰まったような顔で、
何か言いたそうにする時最近よくするようになったその顔の、
その時だけがわからねぇんだおまえが、

何を伝えたいのか・・・


「ヤミー」
「あ?」
「・・・」
(おう何だ機嫌良いじゃねぇか)
いつもよりも少しハッキリと、
心成しか瞳は輝いて(これは過剰表現)
来いというもう少しだけ近づけという要求。

これが俺はくすぐったくてでも可愛いから好きだ。

可愛いとか思うのは俺がアイツを好きだからで、
普段すかしていて人を食ったような所のあるアイツを可愛いだなどと、
思うのはたぶん俺くらいなんじゃないかと思う(そうであって欲しい)
だから、

・・・黙って少し近くへと移動する。

何を喋るでもどこに移動するでもなく、
お互いの存在を傍に感じられる位置に行く。
「・・・」
「・・・」
会話が途切れてもそれを気にしたことは無かった。
けれど今日に限り居心地が悪いと思ったのはアイツが、
いつもとどこかちがう雰囲気を持っていて例の切羽詰った儚い色で、
何かを訴えて来ていて俺はやっぱり、
その何かがわからなかったからだ。

大概、アイツが何を考えているかわからないと、
言う奴ばかりでそれが不思議だった。

ウルキオラは案外分かりやすい奴だと思う。
あのすかした顔の裏で俺のことを日々馬鹿だ馬鹿だと思っていること、
(むかつくが惚れた弱みで黙認している)
や、単独系かと思えて人一倍寂しがりだったり、
(ああ見えて奴は必ず誰かの傍にいる。
 大抵は俺だが俺に用事があれば手当たり次第、目に入り次第、
 ぎこちなく声を掛けて無理矢理同じ空間に居ようとする)
(↑なので俺は常にあいつの傍を離れないようにしている
 ※独占欲では無い)
「ヤミー」
「何だよ」
「ヤミー」
「何だよ」
「ヤミー」
「何だよ」
「何でも無い」

ああ何か伝えようとしている・・・

「ヤミー・・・」
「・・・」

できることならわかってやりたいが皆目検討が付かない。

「ヤミー」

未だかつて無いためらいっぷりに恐らく悪い知らせなんだろうと思う。
だんだん、ウルキオラが苦しそうな表情になって行くような気がして、
心成しか蒸気しているように見える顔に俺は不安を覚えた。
呼吸までが不規則で何か具合でも悪いのかと思う。心配だ。
「ヤミー・・・ヤミー、落ち着け、ヤミー」
(落ち着けはおまえだよ俺はさっきからずっと落ち着いてんだろうがよ)
「焦んなよ」
おまえは何の心配もするな、
「何だろうと聞いてやるから安心しろ、俺ァ心が広ぇんだ」
何が遭っても傍に居てやるどんなことでも聞いてやる。
盾にだって都合の良い駒にだって、
なってやるよおまえが望むならいくらでも・・・
どう思われてようがかまわない俺は、
とことん尽くしてやるから安心しろよ。
「ヤミー・・・」
(で、どうして泣きそうになってるんだおまえの顔は、
 俺は今気遣いの声を掛けただろうがよ)

「好きだ」

・・・

おまえが、

日々俺を馬鹿だ馬鹿だと思ってることを知っている。
見下したような目で蔑みの言葉をさらりと、
日常会話に溶けさせて・・・


「・・・つまんねー冗談言うなよ」

俺が動転するには充分な一言だった。

俺はおまえが好きだがおまえが俺に好きだと言うのは反則だ。
受け止めるのは命令と我侭と無理難題。
好意をキャッチする皿は生憎用意されていなかった。

「おまえ普段さんざ俺を馬鹿にしておいてよく言えるよなァそういうこと」

「・・・」

「俺はな、よく聞け、その手の冗談が一番俺は駄目だ、
 ・・・嘘でも喜んじまうから、
 わかるか、この際ハッキリ言っておく、
 俺ァてめぇに惚れてんだ!
 てめぇの口からんなセリフが出たら死ぬほど衝撃を受けるし、
 てめぇに少しでも良心があるならその手の・・・」
「・・・」

(やべぇなんだすげぇ怒ってる何かまずいこと言ったか?)
(つーか結局おまえは何言いたかったんだよ、
 性質の悪い冗談言ってねぇで吐けよ結局何なんだ)

「・・・」
「おい」
「・・・」

沈黙するウルキオラに俺はいつものことだと思いつつ焦る。
やはり何か微妙にちがくて、

「何なんだ・・・」

疑問を口にするとそれはもう鋭く、
射抜くような、
殺すような顔でウルキオラは俺を睨み、


「貴様は馬鹿だ」

言い放った。

「知ってる」
「この馬鹿」
「んなこたぁ今更・・・」
「馬鹿っ、馬鹿がっ!殺してやろうか?このド馬鹿!」

(ド馬鹿・・・)

「おい・・・」

珍しく興奮して喚き散らすウルキオラを諭すようにしゃがみ込む。

「何だよ、
 何があんだ?
 言えよ、
 何でも、愚痴でも、暴言でも、クソつまんねー考察とかでも、
 俺はおまえの言うことなら何でも黙って聞いてやる。
 な?」
「・・・抱け」
「あ?」
「抱け、俺を」

・・・また突飛な。

「よっ」
言い腕を回ししなやかなウルキオラの肢体を腕で囲む。
で、
持ち上げて「こうか」と呟く。
ウルキオラの足は俺の身長のために地に付かずプラプラと心もとなく揺れて、
俺たちの状態は傍から見ると恐ろしくマヌケだったに違いない。
「・・・もういい」
少し涙声が聞えてまさか?!
と思わず慌ててウルキオラを降ろし顔を覗く。
整った顔の、綺麗な色の瞳にじんわりと涙が有り冷や汗。
(変な気分になるじゃねぇか)
ってその前に何が・・・?!
「おい?!」
慌てた俺の顔をがしりと、
押さえ込みそれは、

もう、

凄い気迫で顔を近づけてきたかと思うと、



「ウ?!」



・・・何したよおまえ今何したよ?



「貴様は馬鹿だ!」



もう一度言い捨てウルキオラは走り去った。



Tuesday, 02, May | トラックバック(0) | コメント(0) | ●他CP | 管理

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