『様子』(レヴィベル←ザン) ―1 |
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後姿、 昼の薄明かりの通路、外への向きと反対、 を歩いていてすれ違う、 一礼、 こちらを確認した合図の、 目配せ、 それだけで今日も生きていける。 そこにふいに胸の位置にある頭が横を過ぎて、 「ボス」 「なんだ」 「どこ行くの?俺もついてってい?」 「・・・好きにしろ」 俺の、存在のすべてを掛けて従うと決めた上司、に、 ちょこちょこと纏わりつく悪魔。 の、ふとこちらに気がつき、作られた笑みが憎い。 睨んでも平然、さらに口端を上げてにんまりと、嘲笑。 殺せるものなら殺してしまいたい。
天才的な能力のおかげ(あるいはそれ以前にそういう人種なのか) 身軽な立場を作り上げて俺には、 到底叶わない幸福な位置を、それを当然のことのように、 享受するそいつが憎い。
突き落としてやりたい。
苦しませてやりたい。
惨めな思いをしろマイナスの感情に呻け。 不幸の底で涙を見せろ。
「何だアンタか」 嫌な遭遇。夜中12時を回った夜、月明かり。 昼間から見ていなかった悪魔がこちらに顔を上げた。 (いつもと違う・・・) 直感的に感じた、その雰囲気。 窓の横の道の影、ボスの部屋の傍で、 足を抱え蹲って何だかぐったりとしている。 「何だおまえか」 言い返してやるとクスリと、見たことも無い笑い方なんだそれは。 小さい、笑みは自然で不自然、 いつもの、にったりと持ち上げられる頬の動きは無くて、 (そんな笑みは可笑しい) 「ボスに用?」 「話があると、俺に」 「・・・へぇ」 曖昧な声を上げて相変わらずこちらを見上げている悪魔の、 姿にぞわりと身の毛がよだつ。
(認めない、嫌だ・・・)
暗くてわからなかった衣服の調子はシャツを一枚、 にいつもの黒い装束、 問題はシャツのほうでそれはどう見ても・・・ しゃがみ込み奴の襟首を掴む。 「ボスに何をした?」 「普通逆でしょ、どう見ても俺のほうが何かされたっぽいじゃん」 「黙れ」 「睨むなよ殺したくなるから、 ・・・これ以上俺のこと追い詰めないで、 何で、そうなのレヴィって」 「・・・ボスに何を?」 「っ」 繰り返した言葉の直後、ガンと頬に衝撃、殴られたようで、 そういう、蛮族な暴力を目の前の、 悪魔がしたことに違和感。
(キャラじゃないだろそういう・・・)
「ベル!」 立ち上がったその時声がして振り向くとそこに上司。 冷えた目が俺を透かして、声の主を突き刺す。 「何の用」 「悪かった」 「うるさい」 「・・・ベル」 「呼ぶなよ俺の名前、穢れる」 「・・・っ」 「貴様!」 「よせレヴィ、いい、言わせといてくれ」 「しかし・・・」 「俺が悪い」 「悪くないです、絶対、 ベルフェゴールが何かしたに決まってる」 「ちょっと待てよ、何で・・・っ こっちの気も知んねぇで、 そいつが何したか教えてやろうか? ハハ、まぁ教えたって変わらないかもね、 ホント馬鹿みてぇレヴィっていつもいつも、 ボスボスって、・・・うぜぇんだよ、 ホント泣きてー、 鈍感、もう少しだけでいいからさ、俺のこと考えてよ、 鈍感、・・・殺せるなら殺してやりてぇ」 「話が見えん」 「死ね」 「何だと?」 「レヴィ、おまえは口を出すな」 「はい」 「ベル・・・」 「何」 「今回のことは・・・」 「聞きたくねぇ」 「悪かった、俺は、言っておけば良かった、おまえに、心内を・・・」 苦い顔で溜め息、上司は悲しげに悪魔を見つめ俺を視線から外した。 「おまえに、協力すると言った、・・・好きにしろと、 俺を、利用してちょっかいを出すのも許した。 相談も受けてやると、 言ったことを後悔してる。・・・苦しかった。 予想以上に、堪えた、悪い、 耐えられ無かった、・・・魔が差したんだ頼む、許せ」 「・・・ッ」 嗚咽、悪魔が泣き出し上司はしゃがみ込んだ。 ・・・話が見えない。
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Monday, 10, Jul | トラックバック(0) | コメント(0) | ●ヴァリアー | 管理
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