『関係』⑮(グリウル) |
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残されたグリムジョーとチャドはやはり警官二人と乱闘になった。
所謂、公務執行妨害だった。
チャドが必死にグリムジョーに合図を送る。
躊躇った。
逃げろと、言っていることはわかった。
学園の生徒、『虚』であるグリムジョーは捕まれば連れて行かれるだろう。
しかし、
チャドは一般人であるため運がよければ注意を受けるだけで解放されるかもしれない。
けれど・・・
グリムジョーは戸惑う。
・・・ふとチャドが笑った。
意を決しグリムジョーが走り出す。
上がった部下の警官の罵声を速度を上げ振り切る。
距離をとり振り返ると諦めたのか、
部下の警官はチャドを連れてまたファミレスへと入って行った。
上司の警官は電話をかけている。
本部への緊急事態報告だろうか。
ファミレスに戻ることから藍染の使いを未だ待とうする姿勢が伺える。
藍染との電話で、
上司の警官が信じたいと発した声色を思い出した。
警官の側にもまた何かがあるのだ。
夜の道は暗く静かで走る自分の息遣いが耳元で響く。
ふとしたらウルキオラがこちらに向かい現れるような気がして走り続けた。
グリムジョーの目がきょろきょろと辺りを伺う。
「・・・どこでぐずぐずしてんだよ」
独り言が虚しく闇に沁みる。
(何があった?)
浮き上がった疑問があたりから一切の音を消した。
急げない、急げそうもないと悲しそうに訴えた声が蘇り胸が痛む。
真面目な、ウルキオラの焦りも同時に電話口から伝わって来ていた。
何かが、
あったにちがいないと決定を下すと同時に冷えた汗が流れた。
(ウルキオラ・・・)
感情的に接した一時の自分の行いが今更憎く感じられた。
向こうから来た乗用車が横を通る。
携帯を取り出し見つめた。
ふと見ると東のビル群の空が色を変えていて、
夜明け・・・
それが近づいている。
「着いたぜ」
騒ぎの過ぎた深夜のファミレス前に自転車が止まった。
オレンジ色の、
髪の少年とウルキオラが降り立つ。
「世話になった」
「てかまだ世話必要っぽいけど」
片足をぐるぐるに包帯で固定されて一本足になっているウルキオラは、
フラフラと立っているのもやっとのようだった。
「・・・」
「つかまれよ」
言って肩を差し出す青年に感謝をしつつ、
得体の知れない相手との面会に巻き込んでも良いのかという不安があった。
「悪いな」
それでも今はその善意に縋るしかない。
病院で受けた一度目のグリムジョーからの電話で、
己の無力さに落胆していたウルキオラの事情を、
聞くと青年は本当に、軽い声で「なら自転車で運んでやる」と、
言い切り父親である医者に許可を求めた。
ヒビの入っている足を念入りに固定し自転車の荷台に、
乗るまでが大変で二度目の、
電話には出れず少し悲しかった。
怒っていても呆れられていてもいいから、
声を聞きたいと思っている自分の意思に気付いた。
(グリムジョー)
おまえはどんな顔をしている?
怒ると怒鳴る。呆れると溜め息をつく。
では喜ぶとどうなる?笑うとどうなる?
ただ知りたいと思う。
その人物の、
何もかもを渇望している。
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Monday, 07, Apr | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理
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