『規則』(グリウル)⑪ アンケート1位/高校生破面 |
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| 「ウルキオラ・・・」
意識するようになってからは、
気恥ずかしくておいとかおまえとかで、
誤魔化してばかりいた名を、
しっかりと発音して呼んだ。
「・・・」
奇跡かと思えた・・・
こちらに、向かって来たその身体を引き寄せる。
それから、用務員を見て宣言。
「こいつのことは心配いらねぇから」
驚いたように、
ウルキオラは顔を上げて俺を見つめた。
ついさっき零した、
涙の残る目じりに指を沿わせる。
「ち、なんだそのマヌケな面は」
「グリムジョー・・・?」
俺への、呼び名が変わったことに、
俺だけが気づく。
「何で・・・」
「何でだろーな」
「・・・」
ディ・ロイがニヤニヤしている。
「なるほどなー」
「黙ってろ外野」
「もしかしておまえ・・・」
「おう」
「俺の友達になりたいのか」
「・・・」
「ごーん」
ディ・ロイが恐らく俺の心の効果音であろう音を、
わざわざ口に出して表す。
「・・・」
「こんなに、好意を向けられたのは初めてだ。
凄く嬉しい、嘘じゃない、
俺は今ヤミーの次くらいにおまえが好きだ」
「そうかよ」
「その次でディ・ロイだ」
「ごーん」
またディ・ロイが口で効果音を出す。
(俺はクラスメイトと並行なのか、そういうレベルなのか俺)
「ありゃー、グリムジョーの次かー!
俺残念賞なー♪」
ディ・ロイは明らかに俺に喧嘩を売っていると思う。
治ったら覚えていろと心中で唸る。
「良かったなウルキオラ、
新しい友達、ずいぶん頼りになりそうな奴じゃねぇか。
俺も安心だ」
からりと用務員は笑った。
「くそっ」
この先に潜む苦労の予感に、
俺は目が回りふらつく。
「どうした?!」
「頭痛ぇ」
「はっ、そうだおまえ病人だったんじゃないか!」
「死ぬ」
「しっかりしろ」
「んじゃ俺ら、居ても邪魔だろうから帰るな!
ウルキオラ面倒見てやれよ、な?山のおっちゃんも帰ろ?
疲れてるだろ?
後はウルキオラにまかせてさ!!」
「あ、ああ、けどよ・・・」
ずるずると、ベットに運ばれていく俺を、
用務員が心配そうに見る。
「新しく生まれた友情の邪魔しちゃ悪いし!」
(・・・友情・・・)
俺の受難は始まったばかりのようだ。
ウルキオラ的に言えば、
天の下した罰とやらが、
俺にも降りかかったということだろう。
「俺もおまえも規則違反か・・・」
「何のだ?」
「・・・」
「おい・・・」
俺の、心は穏やかだった。
規則を、めったに破ったことの無い優等生と違い、
一つ二つ破ったところでそれを、
気にしない図太さが俺の中にはあった。
罰の上手いかわしかたも知ってる。
その、
コツを用務員の、
結婚式までにこの、
お堅い優等生に伝授しようと思う。
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Sunday, 19, Feb | トラックバック(0) | コメント(0) | ●グリウル | 管理
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