『規則』(グリウル)⑦ アンケート1位/高校生破面 |
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「・・・」
(・・・気まずい)
思ったより会話が進まず、
やきもきしている俺をよそに、
ウルキオラは黙ったまま壁のポスターを見つめている。
昼間、
泣き止んだウルキオラは俺の、
追求を避けるためなのか饒舌になった。
ひたすら悪いだとか迷惑をかけただとか、
そんな内容のことを話し、
口うるさくかぜの対処法を並べながら、
手際良く俺を介抱をしてくれた。
(ああ、確かに何か御袋っぽかったな・・・)
スポーツ飲料をわざわざ、
自販機で買って来てくれて、
おごりだと笑った顔がなんだか可愛かった。
「・・・」
「・・・ジャガージャック」
「あ?」
「寝ていろ」
「・・・」
はっきりとした口調でふいに、
命令されその強制力を持つ瞳に思わず従っていた。
(つーか今・・・)
「おまえ、俺のこと知ってたのか?」
ベットに落ち着いた俺は、
少し緊張が溶けたのかウルキオラに対し、
妙なためらいを興さずに質問することができた。
「知っているも何も・・・、
問題児グリムジョー・ジャガージャック、
おまえの起こした問題に、
一番振り回されたのは俺だ」
「え・・・」
「窓ガラスの破壊、警報装置の破壊、
照明器具の破壊、消火器を使った廊下メイクアップ事件。
他校との喧嘩、教師との喧嘩、
レイプ未遂、薬の売買・・・」
「待て、最期の二つには覚えがねぇぞ」
「ああ、
より凶悪そうになると思って今思いつきで足した」
「足すな!」
「・・・」
「・・・」
「・・・とまぁこれらの事後処置をすべて担当したのが俺だ」
「・・・」
「・・・」
「世話に、なってたんだなずいぶん・・・
知らねぇところ、で・・・」
自然、俺の言葉はばつが悪くてとぎれとぎれになる。
「つか、他の生徒会メンバーは何してたんだよ」
「ああ、それがその時、丁度生徒会は総選挙で忙しかったんだ。
次の期もまた残るための策略で皆手一杯だった。
当選するかしないかに無頓着だったのは俺だけだったからな」
淡々とした口調、
よく、生徒会の面々はつるんで行動しているが、
こいつだけは思えばあまり、
あの輪の中にいる所を見たことが無かった。
「何だよおまえ、じゃぁ仕事押し付けられてたってことかよ」
「言い方が悪いな、受け持ったんだ」
「・・・」
心底、昔の自分を罵倒してやりたい。
影で、見えないところで、
働いている他人の、
存在にもっと早く気づくべきだったのだ。
「人は、
人に関わらなければ生きていけないんだ」
突然、吐き出されたその、
優等生の言葉に意識を向ける。
なんだか臭いセリフだったから俺は、
思わず顔をしかめてしまったけれど、
その先に続く何かを聞きたくて優等生を見やった。
「物理的にも精神的にも、
人が生きるには人が必要なんだ。
けど、
人は生き物だから、自分の生きるためのことしか考えない。
だから規則がある、人と人が関わるために。
その規則を、破ると罰が与えられる。
俺は、天の規則を破った・・・
だから刺されたんだ」
「・・・刺された?」
聞くと優等生は意味ありげに笑って、
静かに近寄ってきた。
ベットで上体だけを起こしている俺の肩に手を置き、
「誰にも言うな、俺の秘密を教えてやろう」
どこかいたづらっぽく囁く。
その顔の近さや息の流れに胸が高鳴った。
「俺は・・・男を愛した」
「っ」
その小さな口から吐き出された、
愛するという響にぞくりと、
したものが腰に走る。
「俺は天の決めた生命の規則に反した。
だから罰を受けたんだ」
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Sunday, 19, Feb | トラックバック(0) | コメント(0) | ●グリウル | 管理
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