『規則』(グリウル)⑥ アンケート1位/高校生破面 |
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涙に飾られた端整な顔が、
脳裏に焼きついて離れない。
遠目に、
知っていた気丈なその人物との、
思いも寄らぬ接近。
垣間見た素顔。
動揺は引力に変わった。
ディ・ロイが去って、
相変わらずあの、
優等生の事ばかり考えている頭が、
行き着いた結論は簡単だった。
(やべぇ・・・)
「惚れた・・・」
呟いて確認、
まちがいない。
触れたい、顔をみたい、話をしたい。
心身に湧き上がる欲求は正直だった。
涙の由を、
結局聞くこともできず何か、
悩んでいるふうであったのに帰してしまったことを後悔。
下駄箱で会った時から、
意識している自覚はあった。
それからあの涙。
普段、人に弱みなど晒さずに、
すました顔で生きていた優等生が、
涙を流したこと、
それが、気に掛かって仕方がない。
思い出すのは、
台所の流しの前で出会った切なげな顔で・・・
あの頼りない肩に悲しみが圧し掛かっているのかと思うと胸が痛んだ。
ずっと、真っ直ぐな姿勢で歩いてきた優等生の、
伸ばされた背が辛さのあまり、
うずくまるように曲げられたのだ。
「くそ」
何か、力になってやれることがないかと考え、
そうしてあの優等生、ウルキオラについて、
何も知らない自分の現状が歯がゆくて唸る。
数日前まで嫌ってさえいた相手に、
ここまでのめり込むことになるなんて思いもしなかった。
「あー・・・」
さっきディ・ロイに当て損ね、
むなしく拾いにいった枕に顔を埋める。
コンコン・・・
「誰だよ・・・」
「俺だ」
心臓が萎縮。
試合中かと思えるほどの速さで飛び上がりドアに向かう。
そっと開けるとそこに、
昼間よりもずっと憔悴したような顔の優等生が立っていた。
(俺の妄想の産物とかじゃねぇよな・・・)
たった今まで、脳裏でしか見ることのできなかったその憂いの顔を、
間近で拝み心音が早まる。
「・・・悪いが、匿ってくれないか」
「・・・」
緊張のあまり声を、出すことができず黙って、
まだ制服を着たままの優等生を部屋に招く。
「本当に、悪い、かぜで熱まであるのに・・・」
「うつっても知んねーからな」
ようやく、
開いた口から出たのは憎まれ口だった。
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Sunday, 19, Feb | トラックバック(0) | コメント(0) | ●グリウル | 管理
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