SS + P&C
 
カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



『規則』(※イルロイ)⑤ アンケート1位/高校生破面




「あーあ、

 明日はランニング一人かよー・・・

 寂しー・・・」

クラスの、

連中に俺はよく、

甘ったれだとか群れたがりだとか、

女子か!なんて馬鹿にされるけれど、

「一人かぁー」

孤児になる前、祖父と共に暮らしていた幼少期の思い出が、

いつか、残されていくという恐怖が、

未だ根深く残っている俺には、

笑って済ませられる事では無かった。



一人は怖い。



「早く、部屋戻ろ」

四人部屋にわざわざ入れてもらったくらいだ。

「おい」

そこで唐突に、

「う?」

後ろから掛けられた声に振り向く、

立っていたのはイールフォルトだった。

「・・・」

「・・・」

「イール、何?」

「・・・」

「イール?」

「・・・」

「・・・」

「声を・・・」

「え?」

「ちょっと、声を・・・」

「ん?」

「掛けてみただけだっ!!」

「は?」

「悪いか!」

すぐに顔を赤くして怒鳴る。

イールフォルトはとても怒りやすい。

「何怒ってんだ?

 俺何かした?」

まるで良い逃げのように、

こちらに声を掛けといて今度は、

早足に去って行こうとする背を追う。

「あ、おい!」

あの、キレイな顔で睨まれると悲しい。

出来れば嫌われたくないと、

俺は思っていた。

「イール!」

名を呼ぶと、

ぴたりと止まってこちらを、

振り返った顔はやはり真っ赤だ。

(・・・何で怒ってんのホント)

「独り言を・・・」

「え?」

「漏らすな!恥かしい奴!!」

(あ・・・)

「そっか、それで怒ってたのか!

 うん、悪い、気をつける!」

「ちがう!」

「えぇっ?!」

「一人がそんなに嫌か?」

「は?」

「・・・っ」

「??」

「何でも無い!!」

「あ、イール!」

逃げるように、

くるりと向こうを、

向いてしまったイールフォルトに縋る。

(まだ一緒にいたい・・・)

たいして、

話が盛り上がるとか、

そういうわけでも無いのに傍に居たいと思う不思議。

惹きつけられる・・・。

「さっさと寝ろ!ガキ!」

「ガキって・・・」

(同い年じゃんかよ)

不服に感じつつそれでも、

文句は飲み込み代わりに、

「おやすみ」

こちらの、

言葉に吊られて振り返った相手の頬に、

背伸びをして、

腕を向こうの首に伸ばしてギリギリ、

キスを送った。

そこには、

大事なんだ大切なんだ、

とてもとても親しく思っている・・・

という思いが一杯に詰まっている。br>
「何をっ?!」

絶句して毎度この反応の向こうには、

いつもそういう俺の、

メッセージは伝わっていないようだったが。

そうして、

立ち尽くしているイールフォルトに笑って手を振った。

部屋には全力疾走して帰る。

短い、

本当に短い距離、少しの時間。

グリムジョーの部屋に向かう時、それから今、

たったそれだけの間でも、

一人になるのが辛かった。

(病気?)

ちょっと自分でも時々思い当たる結論。

(あ・・・)

「山のおっちゃん!」

「おっちゃんじゃねぇ」

大きな身体の、

山のような用務員の姿を確認、

思わず駆け寄る。

「どっか出掛けてた?」

「おう」

「あ・・・ウルキオラんトコ?」

「・・・」

「どしたの?」

「あいつ・・・」

「?」

「まだ帰ってねぇんだ」

「え・・・」



Sunday, 19, Feb | トラックバック(0) | コメント(0) | ●グリウル | 管理

この記事へのコメント投稿はできない設定になっています
コメントはありません。


(1/1ページ)