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追憶(藍+ギン)


「問題ないよ」



さらりと、放たれたその、

静かさがすべてを、

超越しているように思えた。



「所詮は最下級さ」





あれから空を、

見上げてずっと、

貴方が黙っているから僕も黙って・・・

近いとも遠いとも無い距離で動かぬ、

貴方の傍で僕もじっとしている。



「僕は、悔いることも惜しむこともしないよ」



突然、何の脈絡も無く呟かれた言葉は、

何か、

得体の知れないものと懐かしいものの、

交じり合ったような声で響き、

あの、

消えた五体の命の、

ことを言っているのだとわかった。

「何の、

 期待もしていなかったというと、

 嘘になるかもしれないけれど・・・

 彼等の、戦ったことを、

 その生と死を責めることも咎めることもしないよ

 彼等の、

 砕けたことが悪いとは思わない、

 弱さも何もかも含めて彼等だ。

 その立場をまっとうに進み終えただけさ」

吐き出された言葉は、

空に溶けていくように音を吸われ、

小さかったり大きかったりしながら耳に届いた。

「ただ、

 生きて、

 そこにあってくれただけでいいんだ。

 僕は、彼等を作ったことを後悔したくない。

 失ってから、

 悔いることは存在の否定だ」





それは・・・



すべてを、



ある、



という事実にして送ってゆこうとする心だった。

何か、

完全に人とはちがう種類の、

生き物の意思を感じた。

それが、

この人の望む神というものなのか・・・



「でも・・・」



そこで半ば反則だと思われる言葉。



「僕は、

 彼等のために流される涙がどこかに、

 あればいいのにと思うよ」



そっと振ってきて広がる、

ああ・・・

(すべてが詰まっている言葉だ)

悲しみと許容が共に生む願いだ。





確かに、

彼等はそこにあって、

戦って散って消えた。





その、事実を悔いてはいけない。

彼等の、力の限界と位置を、

否定してはいけない。



「所詮は最下級だ」



その、諦めに似た許しを、

包む悲しみが願う。



Monday, 13, Feb | トラックバック(0) | コメント(0) | ●他CP | 管理

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