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『関係』②(イルロイ) 破面高校生パラレル



「どうし・・・」

見ると、

「・・・っ、っ、っ」

涙目で声にならない悲鳴を、

上げているディ・ロイの足には、

野良犬が纏わりついている。

「犬だ」

「っ、助けっ」

「ずいぶんなついているぞ?」

「ふぅウぅっ」

「泣くな、今助ける」

犬を振り払うと、ディ・ロイは有無を言わせず、

正面からチャドに登り縋る。

腰の辺りに両足でしがみ付きぶるぶると震えていた。

「犬、苦手か」

「うぅうぅっ」

本気で怖がっているディ・ロイを他所に、

犬はチャドに登ったディ・ロイにどうにかして飛びつこうと、

足元でぴょんぴょんと跳ね回っていた。

「しばらくこのまま進むか」

幸い、

昼しか営業をしない商店街は静まり返り人気が無かった。

「ごめん、チャド、重い?」

「いや・・・」

「犬、まだ来てる?」

「ああ、しっぽ全快で」

「くぉおォっ」

ぶるぶるとチャドの肩に、

顔面を押し付けたままディ・ロイは震える。

「チャド、犬振り払えない?」

「やってみる」

突然、走り出したチャドに、

犬は驚いたように耳を立てた。

そうして、

嬉しそうに後を追う。

人間の猛スピードに犬は簡単に追いつく。

そろりと顔を上げたディ・ロイは今にも追いつき、

飛びつかんとしている犬を見て軽く眩暈を起こし失神。

ずるりと落ちてきたディ・ロイを、

チャドは必死で押さえ込み走り続ける。



先に公園が見えた。

そこで一先ず休もうと思う。





駅前、

華やかな通りを抜けると街頭の光だけの暗い道に入る。

駅周辺を探し回ったイールフォルトは疲れのおかげで、

苛つきが二重になり眉間の皺が四本に増えていた。

(あ、のカスがっ)

心底、殴りたいと思ったのは初めてかもしれない。

その、沸き立つ怒りの中で一点、

深い部分に恐怖があった。

受け入れられない恐怖、決別の予感。

自分の、主張が常識離れしている自覚と、

ふと思い浮かんでしまったディ・ロイの、

冷たい瞳が怖い。

そんな、目で見られたことは無いが、

もしかするとその、

瞳を向けられることだって有り得る。

冷静になればなるほど広がる不安。

それをはぐらかすようにイールフォルトは怒った。

ガタリと、

音を立てた机の揺れと、

押し倒した相手の、

細い身体の手応えが蘇る。

後悔していた。

いつものように、

頬にキスを受け真近に、あの笑みを見た時、

発せられた言葉に反抗したくなった己の心の、

暴走を止められなかった。

「俺たち、親友だよな」

言われ、顔を顰めてしまった素直な流れ。

「ちがうの?」

不安そうに聞かれ腹が立った。

一方的に感じた憤りに任せ、

感情だけを優先させて起こした行動。

手首を掴みガタンと、

机が鳴るのもかまわず口づけた。

驚きで開いていた口内に入り、

癖のある歯を避け奥にあった舌を取り弄る。

「こふっ」

ディ・ロイはむせて、

こちらの胸を遠慮がちに押した。

解放してやると口端から伝った糸を拭い、

「何すんの、イキナリ」

下を向いてしまった向こうの顔は見えなかった。

「いつもおまえがやっていることだろう」

「・・・」

「はっきり言って、迷惑していた」

「・・・っ」

「おまえを、

 親友だと思ったことは一度でも無い、

 友達とさえ思ったことは無い、

 俺はっ・・・」

バンと、

突然立てられた音に驚き怯む。

机に、手の平を叩き付けこちらを、

睨む顔は静かだった。

「・・・」

「なるほど、

 俺嫌われてたんだ?

 ごめんネ、気付かなくて」

言い捨て去ろうとしたディ・ロイの腕を掴む。

「放せよっ」

怒鳴り声と共に振りほどかれた手を動かすことができなかった。

急に恐ろしくなり言葉を発せなくなった。

走り去る後ろ姿に目だけが追い縋る。

「・・・っ」

(人の、話を最後まで聞けっ!!)

押しつぶされそうになった心を守るように、

湧いた怒りに身を任せ足を動かす。

イールフォルトはそこで、

やっとディ・ロイを追った。



Tuesday, 04, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理

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