『関係』⑫(グリウル) |
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走った。
走り続け十字路についた。
駅はどこかとあたりを伺う。
電信柱に書かれた地名を見てもめったに、
外に出ないウルキオラには分かるはずもなくそこで、
初めて足を止め立ち尽くすことになった。
(早く!止まってる暇など無いんだ!)
気ばかり焦り流れ落ちる汗が冷えていく感覚に苛付く。
(警察・・・)
思い立ちヒヤリと犯すところであったまちがいに恐怖した。
(・・・駄目だ、警察は駄目だ・・・)
人も無く暗く静かで、
夜中・・・
絶望的だと思った。
(・・・どうすれば)
心中で頭を抱え込みウルキオラは不安に負けそうになっていた。
そこで、
目の前をひょこひょこと通る野良犬を見つけた。
口に何かの機械の欠片を咥えあたりをきょろきょろ見回す。
そこでぱっと、
ウルキオラを見つけしっぽを振った。
(俺は何も今食い物など持っていないぞ・・・)
しかし犬は一目散にこちらを目指し駆け出して来ていた。
(・・・)
そこで突然犬の横顔が左側から光を受けて右に影を作る。
「!?」
見ると大型の乗用車が向かって来ていた。
「・・・っ」
今なら間に合うと思った。
犬はまだ車道に片足しか出していない・・・今なら、
こちらから走って行き歩道に突き返せば今なら・・・
パァーッ!!!
騒音、車の出した警告音は静かな十字路のすみずみまで響いた。
生まれて初めて、
味わった衝撃は内部に振動を送り骨を震わせ、
そして、
数分前行った催眠のためのイメージを思い出させた。
・・・死に逝く自分・・・
「うわぁっ!あんた!しっかりしろよ平気か?!おい!」
運転手であろう男の悲鳴のような声が遠くで聞え、
気付いたら目つきの悪い、
髭面の男が覗き込んでいてウルキオラはどこかに寝かせられていた。
「ここは?」
「優しい看護婦さん2名装備のクロサキ医院ビップベットの上だ」
「俺は・・・」
「夜中に車道に突然飛び出すキチガイ小僧」
「・・・」
「ちなみに、今その優しい看護婦さん2名は深い眠りの中にいます。
はっはー!残念賞だ少年っ!」
騒ぎ立てる髭面は笑った後いきなり、
後ろから何かの打撃を受け沈んだ。
「患者には誠意を持って接するんじゃなかったのかよクソオヤジッ」
「おまえは?」
「この髭面の息子だ。家は確かに町医者やってっけどまず一つの家庭だからよ、
夜中に飛び出しで事故とかそういうのはあんま起してくれんな」
「・・・悪かった、迷惑をかけたな」
探し見た部屋の時計は深夜2:50を示していた。
「あんた、その外見からしてあの、丘の上の学園の奴だろ?
今日、何なんだ何か、・・・あんのか?
さっき・・・まだ8:00過ぎぐらいん時にも、
制服姿の奴と丁度、会ったばっかなんだけど」
「・・・門限が週末は伸びるんだ」
「・・・」
その時、
ウルキオラの服のポケットに入れられていた携帯が鳴った。
出ると、
「馬鹿野朗!」
「っ?!」
耳が痛くなるような音量で怒鳴られ驚き、
携帯を取り落としそうになった。
(グリムジョー・・・)
・・・激怒している。
(あたり前だ・・・さっきからもう一時間以上経ってる)
ことは急であったというのに・・・。
(・・・俺は本当に役立たずだ)
「遅っせーんだよ何やってんだ!」
「悪い」
苛だちが伝わってきて悲しくなった。
「・・・てめぇ、ちゃんと藍染様に伝えたのかよ」
棘のある言い方が胸を締め付け目頭が熱い。
「もっかい言うぞ、早く例の・・・」
「今それを俺が持ってる」
「あ?」
直感だったが恐らく、グリムジョーは今、
ウルキオラが届けようとしている物の話をしているのだと思った。
「頼まれた、届けるようにと」
「・・・急げって言われなかったか?」
「言われた」
「いつの話だそれ」
「1:00頃だ」
「てめーふざけんなよ、もう3時近ぇぞ?!」
「ああ」
「・・・」
電話口の向こうで溜め息。
「・・・今からでもいいから急げよ」
「できない」
・・・足に感覚がなかった。
「あぁ?」
きっとどう頑張っても動かないのだと思う。
「・・・できそうもない」
「いい加減にしろ」
「悪い」
沈黙が続いた。
・・・何か案をと脳を刺激し懸命に考えを巡らせた。
電話口で聞えた二度目の溜め息。
に、打ちのめされ思考が中断される。
「・・・後で、
後でまた連絡を入れる」
「あ、おい!」
ブツリと、
切れた音が関係までをも切ったように感じた。
これ以上溜め息をつかれたくなかった。
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Saturday, 29, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理
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