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『関係』⑨ 破面高校生パラレル

そっと、

用務員は強張ったウルキオラの背を撫でそれから、

舌打ち、溜め息をついてしゃがむ。

「このクソ優等生が」

「??」



「仕方無いよ・・・」



「あ・・・」

「藍染様・・・」

用務員が少し、

焦った顔をしウルキオラの肩を抑えた。

藍染は地に崩れた人の群れを見回し、

呆然・・・

そんな、言葉が似合うように立ち尽くす数人の生き残りを目で追う。

「僕の・・・力不足だったね」

「そんな!」

用務員は慌て申し訳なさそうに口ごもりうな垂れ、

「すみません」

謝る。

「すみません本当・・・」

「事故さ」

「・・・」

「すみません・・・っ」

雰囲気を読み取りウルキオラも謝る。

悟った。



自分は、とてつもなく取り返しのつかない愚かなミスをしたのだ。

その罪は重さを伴い自分の、縋った用務員にも降りかかって今、

用務員の頭を下げさせている・・・



・・・それが、悲しく悔しい。



「・・・」

ぽんと、

頭に置かれた手は大きく、

けれど、用務員ほどのごつさはなかった。

無言の、

それでも確かな許し・・・

消え入りそうな気持ちが、

少しばかり軽くなり顔に熱が生まれた。



恥かしかった・・・





ゆっくり、

「・・・」

顔を上げると目が合いその目が、

何を責めるでもなくこちらを見ているので勝手に、

感情を持ちそれに振り回されている自分が可笑しい気がして、

すっと、

作られた笑みをただ見つめて思う。



何をすればいいのか・・・



失敗、それをした後何をすればいいのかが知りたい。

「・・・ヤミー、君は重なっている子たちの体制を整えてあげて」

「はい」

「それから・・・」

じっと見つめていたのがわかったのか藍染は笑ってこっちを向いた。

「ステージ下にたくさん毛布を用意してる・・・

 まだ冷えるよ春の夜は・・・

 風邪を、

 引かれたら悲しいからね。

 なるべく急いで」

こちらの、心を透かしたような言葉・・・

「はい」

黙って甘えた。

次の行動こそは自分で考えようと決意し、

ウルキオラは駆け出す。

毛布を持って、

生き残った他の生徒の元へ行き分担の提案を出し行動を促す。

それからずっと、

近づいてよく見れば眠っている、

人の山の世話に追われて時を送った。


深夜1:00・・・



闇の中で怖いくらいに、美しく映る桜の木の下。

満開だった。

ウルキオラは藍染に呼ばれ一人佇んでいた。

順々、

生き残った者は一人一人藍染に呼び出されそれから、

変な顔をして戻って来ていた。

何を、話したのか気になったが聞く気にはなれなかった。

教員たちは今夜は、

寝るつもりが無いのか忙しく動き回っていて、

何人もが外出しては戻って来てあちこちに連絡を取っている。

そこで欠けていたクラスメイトの顔がよぎり心配になった。



・・・まだ帰って来ていない。



見上げ、黄色というよりは金色をしている月を見つめふと、

ぽっかりと何かが開いている間隔に陥る。



何がかはわからないけれど大きい・・・

確かな穴が自分のどこかに存在している・・・



ひらひらと、

落ちる花びらが夢かと思うほどぼんやりした世界を作り、

・・・そこで声が掛かった。

「君は・・・何を失ったのかわかるかい?」

藍染だった。

先ほどのことといい突拍子の無い、

ことを言う人だと思う。

「君の、何が巻き込まれて消えたのだろうね」

「・・・?」

桜の木の下の世界が異質に見えた。

藍染がいるだけ、

それだけで世界が変わる。

「催眠・・・

 かけていたんださっき・・・

 それに、

 かからずに毒ガスを吸い込んでしまったんだよ君は」

「毒・・・??」

「皆、

 吸ってはいるが眠れた者は恐らく平気だろう・・・

 けれど、

 君含め催眠にかからずにいた者はね、

 失ってしまったんだよ残念ながら」

「何を・・・ですか?」

「さぁ、僕には・・・

 君のことはわからないからね何か、

 君が気付かない限りはわからないかもしれない」

どこか、

底の無い言い方が恐ろしく不安だった。

自分は、

何かを失いその失ったことにさえ気付かずにいるというのだ。





Friday, 14, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理

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