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『関係』③(イルロイ) 破面高校生パラレル


薄暗い公園のベンチに、

ぐったりと張り付くように寝ているディ・ロイを、

すぐ傍にいる犬が心配そうに覗き込んでいる。

その、犬の後ろでチャドは、

どう犬を追い払おうかだとか、

ディ・ロイがこのまま起きなかったらどうしようかだとか、

そんなことを考えて黙りこくっていた。

「ん・・・」

ディ・ロイが身じろぎ、

チャドは慌てた。

今、もし起きたら目の前にいる犬と鉢合わせて、

きっとまた気を失うか、

もしかしたらパニックになってしまうかもしれない。

「ンん」

そんなチャドにかまわずディ・ロイは、

出し抜けに腕を持ち上げ、

あろうことか傍の犬を抱き寄せるように包み、

犬の横顔、ごわごわの毛の中にキスをしたのだ。

「うっ?!イー・・、毛深っ」

うめき、うっすらと目を開ける。



早業だった。



一瞬で犬と入れ替わったチャドは何食わぬ顔で、

起きがけのディ・ロイと視線を合わせる。

「??」

「起きたか」

「んー?」

ディ・ロイは首をかしげ、

寝ぼけ目でチャドを見つめる。

「イーる?」

「ちがう、チャドだ」

「チャド、ちゃ・・・あ!お!おお!

 ごめん!俺寝ぼけてて!!」

覚醒し慌てて、

起き上がったディ・ロイはチャドの後ろの、

生き物を見て縮み上がる。

「っうわ!まだ居る!」

ディ・ロイは、

すかさずまたチャドに飛びついて全身に力を入れた。

避難をしたいというディ・ロイの意思を汲み取り、

黙って立ち上がったチャドは悠然と歩き始める。

とっと、

という音を立てて犬は着いて来たが、

さきほどの飛びつかんとする勢いは無かった。

それに、安心しディ・ロイは少し、

体に込めた力を抜くと息を吐いた。

二人の、

居た公園は四方を建物の塀に囲まれ、
醜く狭まった小さな公園だった。

街灯は園内のトイレ付近に一つ、

シーソーとブランコとベンチの他には、

伸び放題の雑草と数の多い葉の広がった木が茂る植え込み部分が、

出入り口からトイレまでを繋げるようにあるだけ。

「オイコラ、暴レルナッテ!」

その出入り口となっている場所に人影が現れ、

もめている声が届く。

「放せ!放せと言っているだろう!!」

ディ・ロイがぴくりと反応を示した。



「イール・・・?

 っ!チャド、隠れて!」


咄嗟に、顔を合わせるのが躊躇われチャドに、

茂みへ潜むよう頼んだディ・ロイは後悔していた。

(もしかしてイール、絡まれてる?)

助けなければ、と思う心の中を、

「迷惑」という言葉を発した時の、

イールフォルトの声のトーンがよぎる。

(ああ、もう、どうして俺はイールに嫌われてんだよ?!)

何もなければすぐにでも出て行くというのに。

(どうして・・・)

「いいかげんにしろ!通報するぞ!」

「ダカラ、何言ッテンノカワカンネーッテ」

「ツウホウ!オマエヲ!ケイサツ、ツウホウ!」

「何ダ、日本語喋レンジャネーカ・・・ッテ、

 通報?!オイオイ冗談キツイゼ、

 笑イモンニナッチマウ・・・

 タダチョット、

 話シスルダケッテ言ッテンジャネーカ!」

「手を放せっ!」

「オット、怖ェガキダナ」

「・・・」

公園の中央に来てやっと、

掴んでいた腕を離した男をイールフォルトが睨む。

「悪カッタッテ、

 アンマリ、人に聞カレルトマズイ話シナンデネ」

苦笑いの、

顔で謝罪をした男に変な悪意は感じられなかった。

一部始終を見守っていたディ・ロイの胸に安堵が走る。

「話・・・?」

「ンート、あー、こんにちわ、俺の話してる、言葉、

 わかりますか、エット、英語は苦手ですが、

 その・・・」

「日本語デイイ、オマエノ発音ハギコチナクテ苛ツク」

「ッテオマエ、ヤッパ日本語デキンジャネーカ!

 サッキカタコトダッタカラ俺ハテッキリ・・・」

「気ガ動転シテイタカラナ、デ、話トハ?」

「アア・・・」

「ソレニツイテハ・・・」

声がして向くと男の後ろ、

にもう一人男がいる。

「私カラ話ソウ」

「朽木センパイ・・・」

「下ガッテイロ、恋次」

「・・・」
「まず、我々の身分を提示しようか」

言って男は懐から何かを出しイールフォルトに見せる。

「警察?」

「ああ」

「・・・」

会話が、

まったく見えてこないのであろうディ・ロイに、

チャドがこっそりと通訳を施す。

現在、二人は公園の入り口付近の茂みに隠れた状態で、

不自然に抱き合ったまま佇んでいる。

葉の多い木の影、

二人の警察官はチャドとディ・ロイに気付いていなかった。

動かなくなった二人の足元で犬は伏せをしていた。




Saturday, 08, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理

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