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『関係』⑥(イルロイ) 破面高校生パラレル


「イール・・・」

騒音の中でこっそりと顔を覗く。

感情が感じられない目でじっと見据えられた。

なんだか悲しくなり呟く。

「ゴメン、俺、

 イールは俺のこと嫌いかもしんねぇけど、

 駄目だ俺、

 やっぱイールのこと凄ぇ好きみてぇで・・・」

イールフォルトからの返事は無くただ地下鉄が流れるように止まる。

「さっきは怒鳴ってごめん、

 俺、嫌われてるって、わかって悲しくてどうして、

 もっと早く言ってくれなかったのかって、

 逆ギレしてた。

 こんな、

 好きになる前にもっと、

 早くに言ってくれれば良かったのにって」

「・・・カスが」

低い呟きが落ちる。

「貴様の腹の内はもう知れているんだからな」

「え・・・」

「上手いことを言って俺を誤魔化そうとするな」

「何・・・?言ってんのイール?

 俺は・・・

 ただイールが好きなんだよ?!

 イールが迷惑だって言うキスもしないし、

 他のイールが嫌ってるトコも治すから、

 ・・・仲直りしたくて」

「・・・俺を騙そうとしても無駄だ」

「イール・・・??」

「俺の名を口にするな」

「そんな・・・そこまで嫌うことねぇじゃん!

 イールが、

 俺のこと嫌いなのはもうわかった!

 わかってるから!!

 でも、

 今まで、は、まだもうちょっと普通に接してくれてた!

 どうして、急にっ!

 こんなに好きなのに俺、酷ぇよ!

 今更、こんな突然・・・

 俺、どうすればいいんだよ!!」

「黙れ、俺は知っているんだおまえが・・・っ」

(さっき男と公園で抱き合っていたのを見ていたんだ俺は)

「いかにも、

 無垢なふりをしておまえは・・・」

(ああして普段から遊び歩いていたのか?)

「・・・俺の、反応を見て楽しんでいたのか?」

「???」

「面白かったか?おまえに、

 振り回されている俺は!」

「イール、どう・・・」

「おまえは!

 俺をからかいながら、

 俺を心内で笑いながらっ!

 ・・・おっ、男遊びを!影でこっそり、

 していたんだろうずっと、

 ・・・許さない、絶対」

「はぁ?」

「この尻軽!」

「ちょっ?!イール何言ってんの?!

 俺がいつっ!っていうか・・・え?

 もう何かホントわけわかんねぇんだけど?!」

そこで、

ディ・ロイは視線に気付いた。

次第、

大きくなっていた声は周りの者の注目を集め、

人で溢れた駅の中に妙な空間ができている。

その中心に取り残された自分たちのほうを、

見てしきりにぼそぼそと話しをしている中に、

二人の警官の呆れ顔があった。

「痴話喧嘩は他所でやれ」

「痴・・・っ」

その言葉にディ・ロイが赤くなった。

「そんなんじゃねーよ馬鹿っ」

「・・・ともかく乗れ、
 
 特急待ちで四分停車だそうだ、

 ・・・もういい加減にしろと言いたい」

うんざりとした口調の警官は車内へ入るよう二人を促す。

ディ・ロイはイールフォルトの手を取り前に足を出した。

一瞬、驚いたような顔をしたイールフォルトは、

顔でディ・ロイを睨んだが手を振り解こうとはしない。

(・・・)

そのまま電車に乗り込む。

(イールは、何の勘違いをしてる?)

ディ・ロイは考えていた。

現在、

銃を所持する私服警官二人に連行されている身だというのに、

そんなことを考えるのは不謹慎だったが、

せめて何かある前にどうしても、

イールフォルトと仲直りをしておきたいというのが、

ディ・ロイの本心だった。



そして込み合う電車の中で、

ふと見覚えのある頭部を見つける。

派手な色が周囲と浮いていて少しだけ焦ったが私服を着ているので、

簡単には捕まらないだろうと考えその人物に視線を送った。

(グリムジョー・・・っ)

向こうは気付くといつもの、

不機嫌そうな顔で反応を寄越した。

なんだか、

とてつもない安心感に包まれ、

緊張が緩みディ・ロイは泣きたくなった。

繋いだままの、

イールフォルトの手がその握りを強めて来たためそこで、

ハッとなり留まる。

すんでのところで平生を保てたディ・ロイはイールフォルトを見つめた。

・・・黙ってこちらを見返して来ている。

ディ・ロイの、小さな変化を見逃さずに注意をくれたイールフォルト、

を、やはり好きだとディ・ロイは思う。



Saturday, 08, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理

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