『規則』①※千円続(グリウル→ヤミ) アンケート1位/高校生破面 |
|
|
天に、
広がる青の空から、
何かが真っ直ぐに勢い良く、
降って来てズブリと、
刺さって抜けなくなった。
それは、切っ先の鋭い、
透明な刃物だった。
俺が、
何をしたと言うのか・・・
ただ、昼食をいつものように、
屋上で取ってその後、
横になって待っていたのだ。
いつものように・・・
少しだけ残した昼食は、
大食いのくせに小さい、
弁当しか持ってこないその男のために・・・
身体が巨大で、
生徒から山と呼ばれている。
その男を俺は、
毎日この場所で待っていただけだった。
どうして・・・
刺されたのだろう俺は、
天の下したそれに・・・
「結婚?」
「ああ」
「冗談はよせ」
「マジなんだって、こないだの見合いが大成功で、
ま、向こう29で、俺も今年で34、適齢期っつーか、
そんなわけでよ、
優等生様にゃ世話になったしなー飯分けてもらったり?
報告しといてやろーと思ってよ、
俺、用務員辞めるわ、
向こうの実家が店やってて、
そこ継がせてもらえるんだ、
すげーだろ俺、シンデレラみてー」
惚けただらしない顔で、
大男は青い、
空ばかりを眺めている。
「不細工なヒロインはいらん、
寝言は寝て言え」
ズキズキと、心臓が痛んできて、
「・・・おまえな、少しは寂しがるとかしろよ、
俺以外ろくな話し相手もいねぇくせに」
・・・
「ヤミー」
「なんだよ、最期まで呼び捨てか優等生」
「行くな・・・」
「はいはい、今更俺の重みに気づいたのかよ」
息ができない。
振り絞って出した願いは簡単に流され、
冗談に包まれ転がされていった。
「まぁ、近頃ほら、友達も出来たみてーだしおまえ、
あの、なんだっけ転校して来たあいつ、
なんてったっけあの、
ガリガリの奴とかよ、
いるしな、
おまえなら、俺いなくてもどうにかなるよな」
咽喉が、
詰まって苦しい。
「ま、そういうわけだから俺、
ここ出るんだ来週、
おまえ、
呼んでやってもいいぞ、結婚式」
死にそう・・・
「行かない」
「まーたそうやって・・・」
「出ない」
「なんだよ、つれねーな優等生」
「うるさい」
「まぁいいけどよ、
俺は、
おまえと違って知り合い多いからよ、
別に来客に困っちゃいねーもんよ」
「ヤミー・・・」
「なんだよ、今更出たいとか言ったって、
招待状の数は限られてんだぞ」
「・・・」
「ま、おまえがどうしてもっていうなら・・・」
「ヤミー・・・」
「なんだよ?」
どこにも行くな・・・
行かないでくれ頼むから、
俺の傍を離れるな、
結婚なんてするな、
結婚なんてするな、
他の人間のものになるな・・・
ずっと・・・
ここにいろおまえは、
頼むから行くな・・・
嘆きに、
近い悲鳴は咽喉奥で、
痛みと共に小さく消えて、
発することができなくなった。
「ったくこれだから思春期のお子様はよー、
わけわからんくて困る、
おい、ウルキオラおまえ、俺の結婚式、
出たいのか出たくないのかはっきりしろよ、
出たいだろーが素直に言えや」
涙が、
どうにも堪えきれないくらいに、
自己主張を初めて、
足が、
咄嗟に動いてその、
息の詰まる空間から俺を逃がした。
| |
|
Sunday, 05, Feb | トラックバック(0) | コメント(0) | ●グリウル | 管理
|
この記事へのコメント投稿はできない設定になっています |