I f グリムジョーver ~退行~ ③ |
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| 「でか女!!でか女でか女でか女!!!」
「貴様ああああっ」
「落ち着けイールフォルト!」
「ばーかばーか」
「クソがっ」
押さえつけていたヤミーの腕を押しのけ、
イールフォルトはグリムジョー目掛け突進して行った。
イールフォルトの拳が、
上がる。
「おい!!」
ヤミーが叫ぶ。
そこで、イールフォルトは目の前に、
いるのがグリムジョーでは無いことに気付く。
その場に、いたのは肩を、
貸していたディ・ロイだった。
「カス?!」
どうやらグリムジョーは、
本能的に仕掛けられた攻撃を回避するべく、
素早い動きで移動してしまったらしい。
怒れるイールフォルトの、
霊圧に圧倒され、ディ・ロイは固まっている。
ばきっ!!!
イールフォルトは拳に、
確かな手ごたえを感じた。
どさりと、
倒れていく人影が、
丁度ウルキオラに呼ばれ、
駆けつけたシャウロンの目の端に映った。
強い打撃だった。
「っ」
思ったよりも力の入ってしまった己の拳を、
見つめるイールフォルト。
「・・・っ」
「何してるんですか!」
駆けつけたシャウロンが渇を入れた。
⑧
「オイ、しっかしろ!」
ヤミーが呼びかける。
「何があったんだ?」
というウルキオラの質問に、
イールフォルトは複雑な表情をつくる。
「グリムジョーが俺を、侮辱したから頭に来て、
そこにカスがいた・・・と思ったらいきなり・・・」
「??」
要領を得ない説明に、ウルキオラは首をかしげ、
斜め下に目を向けた。
無傷のディ・ロイが眉を下げて、
こちらを見上げている。
その、膝には薄目を開けたグリムジョー・・・
「俺が、殴られそうになったトコに、
グリムジョーが飛び出して来てっ・・・それで、なんかまた、
変なとこ当たっちゃったみたいっ!」
「・・・」
「・・・っ、・・・~・・」
何事か呟くグリムジョーの声は小さい。
シャウロンが屈み、耳を近づけた。
「ばか・・・が、とろいから・・・」
「グリムジョー、もしかして俺のこと、
庇ってくれたの?」
「ちっ・・・っちげーよっ・・・
ばか」
ぶっきらぼうに、
発せられた言葉に、
小さな暖かさがあった。
「ごめんな、俺、とろくて・・・」
「・・・」
「ありがとな、グリムジョー」
「うんこ」
「はいはい」
グリムジョーの頬が赤い。
そこで、誰かが大きな、
溜め息をついた。
「おい・・・」
溜め息の主、
しゃがみ込んだイールフォルトが、
グリムジョーを覗き込む。
「悪かったな」
その、
言葉にその場に、
いた全員が目を見開く。
(え??)
(イールフォルト・・・が、
自分から謝った??)
(己の耳が信じられませんね)
(マジでなのか?!)
驚く皆の中心で、
グリムジョーが少し笑って言った。
「なかなか・・・いい、パンチだったぜっ・・・!
い、・・・痛くなかった、けど、なっ・・・!!」
「・・・」
そこで、イールフォルトの顔に、
光や花をバックに飾りたくなるような、
笑みが浮かんだ。
「お前こそ良い根性だ」
「へへっ」
イールフォルトの顔に、再び浮かんだ笑みは、
天使画に存在しても可笑しくないぐらいに、
美しく、それを、もろに見たディ・ロイは赤面してしまった。
その、ディ・ロイの膝の上で、
グリムジョーが頓狂な声で突然、
宣言した。
「寝る」
唐突だったが中身が、
子どもだからかと皆が納得し、
「良い夢を見ろ」
イールフォルトが穏やかに囁く。
「おやすみ、な・・・」
ディ・ロイが、膝の上のグリムジョーの、
額に手を置く。
すー、と早い寝入りに驚きつつも、
その寝顔を愛おしげに見守る二人。
「寝入るの早いな・・・」
「な」
言い合い笑う。
「夫婦かよ・・・」
ヤミーが呟き、
「というよりもう核家族完成ですか?」
シャウロンが続け、
緩く温かな空気が漂い、妙な雰囲気ができる。
「でかい子どもだ、噂のパラサイトか?」
「・・・」
ウルキオラが少し、ずれたコメントを足した。
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Wednesday, 25, Jan | トラックバック(0) | コメント(0) | ●Allキャラコメディ | 管理
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