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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



 I f  グリムジョーver ~退行~ ②




「♪うーみはーひろいなーおおきーなー」

ディ・ロイに手を引かれ、調子外れの歌を歌いながら歩くグリムジョーの後ろにヤミー、

「なるべく広いところがいい、監視しやすくなる」

黙ってグリムジョーの歌を聞いているディ・ロイの前にウルキオラ、

熱唱中のお子様を前と後ろで挟みながら進む。

「♪つーきーがーのぼるし~ひはしーずーむー」

「ここら辺にするか」

歩を止めると、グリムジョーはぴたりと歌うのをやめた。

「うんこ」

「・・・」

(・・・)

(思考がまったく読めねえ・・・)

「と、とりあえずあれだ、おいグリムジョー、

 俺たちの名前とか、わかってるのか?」

「・・・」

黙ったグリムジョーは、何か考え込んでいる。

そしてヤミーを指して、

「デブ!!!」

「・・・っぐ!!!!」

ディ・ロイを指して、

「ガリ!!!!」

「がふっ!!!!」

名付けられた二人は悲鳴をあげて、

がくりと膝をついた。

そしてしくしくと泣き出す。

「意外とナイーブな奴等だ」

一人ウルキオラだけが、涼しげな顔で二人を見守る。

「・・・」

それからこちらを、じっと見つめ考え込んでいるグリムジョーに、

「ああ、俺の名は決めなくていいぞ、特別に教えてやるから」

「・・・」

ウルキオラが意図の読めない面を向ける。

「ウルキオラ様」

「ウルキオラ様?」

「そうだ、それが俺の名だ」

「おい!!!」

ヤミーが慌てた声を上げる。

「呼んで見ろ」

「ウルキオラ様」

「よし、よくできた偉いぞ、

 確認のためにもう一度呼べ」

「ウルキオラ様!!!」

意味をわかっていないグリムジョーは、誇らしげに声を張り上げた。

「ウルキオラ様っ、ウルキオラ様っ♪」

「実に愉快だ、ヤミー、これはいいぞ」

「・・・っ」

ディ・ロイもヤミーも、

ただただ冷や汗を流すしかなかった。

「ウルっ・・・」

そこで突然、グリムジョーが口を噤む。

「ん?どうした?」

「・・・」

俯いて震え出したグリムジョーに、ディ・ロイが駆け寄る。

「グリムジョー??」

「・・・」

顔を上げたグリムジョーの目には、

涙がいっぱいに溜まっていた。

「ヴ、ヴヴ、痛え~」

「うわっ!血?!」

「舌を噛んだようだな」

「マジで?!」

「うわあ、ちょっ、泣くなよグリムジョー、

 痛くない痛くない、痛いの飛んでけー」

「うう~~」

「待ってろ、シャウロンを呼んで来る」

「ああ、頼む」






「おい」

ディ・ロイの肩にうっぷし、

しくしくと無くグリムジョーを、

憎々しげに見つめて、

「イールフォルト・・・」

登場した男に、ヤミーがうさんくさそうな目を向ける。

「何をしている・・・」

「何って、泣いてるんだよ、今舌噛んじゃって」

様子が気になったのかまたは別に理由があるのか、

気まぐれに顔を出したイールフォルトに、

ディ・ロイは心のうちで頭を抱えていた。

(頼むから、グリムジョーに変なことでからまないでくれよっ?!)

その、願いを一蹴するかのように、

「ふん、情けない奴だな」

イールフォルトが呟く。

「・・・」

「イール!」

すかさずディ・ロイの、

普段聞くことの無い怒気を含んだ声が上がる。

「うるさいカス、俺はグリムジョーと話している」

「その、グリムジョーは今子どもなんだぞ!

 少しは考えろよ!」

「・・・っ」

自分にここまで、敵意を向け、

食いかかるディ・ロイに、

イールフォルトは戸惑っていた。

(カスが強気だ・・・

 ・・・母性本能か?)

ので少し、思考力が落ちていた。

(・・・くそ)

イールフォルトには、

図体のでかいままであるグリムジョーを、

子ども、となかなか思うことができなかったのだ。

「オイ、なんとか言えグリムジョー!!

 カスに庇われるなんておまえ、

 情けなさすぎるぞ」

「イール!!(それちょっと俺に対して酷くない?)」

「・・・泣き寝入りか!!」

続くイールフォルトの挑発文句の中に、

不合理を感じつつディ・ロイは、

ひたすらに願った。

(頼むグリムジョー、のせられるんじゃないぞっ!!)

しかし、

グリムジョーの顔面を、受け止めていた肩がすっと、

軽くなった。



「なっ、泣いてねーよ!!ばか」

「鼻水が出ている」

「ううっ!!!」

「ふんっ」

「うあああっ、ああっ、ばか~」

叫びグリムジョーは、またディ・ロイの肩に顔をうずめる。

「イール!!!」

「イールフォルト!!」

「っ!!」

ディ・ロイと、普段あまり話もしないヤミーにまで叱られ、

悔しげに下唇を噛み黙ったイールフォルトの目の前、

またグリムジョーはしくしくとディ・ロイの肩を濡らしていた。



「ガキが!!!」



吐き捨てられたイールフォルトの言葉に、

ディ・ロイが苦い顔をして溜め息をついた。

「ガキガキガキガキガキガキ」

(どっちがだよ・・・)

ヤミーが心のうちで呟く。

「黙れ!!」

真っ赤な目のグリムジョーは、今度は怒りの形相で顔を上げた。

「お、女だと思って甘くみてやればてめー」



一瞬、その場が凍る。



「女?」



Wednesday, 25, Jan | トラックバック(0) | コメント(0) | ●Allキャラコメディ | 管理

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