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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



 I f  グリムジョーver ~退行~




その音はどこまで届いただろうか。

ゴン、と切れよく一音、



つまづいて勢いよく、

その背中を押してしまったディ・ロイが悪いだとか、

その日たまたま高い場所に座っていたという運命が悪いだとか、

理由付け、または原因解明という名の後悔を並べるときりがない。

仮にも十刃であるグリムジョーが、

まさか受身を取り損なうだなんて誰が思ったろう。






「参りましたね、知能が著しく低下しています。

 判別能力、忍耐力を始めレベル的に言えば・・・」

「いでででででっ」

無表情な顔で、ディ・ロイの鼻を力任せにつまみ、

引っ張っているグリムジョーを一瞥し、

シャウロンは眉間にしわを寄せた。



「現世でいう幼児です」



はー、とその場にいる殆どが、憂鬱な息を吐き出す。

「ばーか、うんこ」

「うんこ言うな」

意識を取り戻してからずっと、こんな調子のグリムジョーを、

咎めるディ・ロイの顔には早くも疲労の色が出ていた。

ずっとお守りをしているディ・ロイを含め、

今回の事件に関与しているメンツは、

その場に居合わせたシャウロン、ウルキオラの二人と、

しばらく意識の無かったグリムジョーの傍で、

あたふたとしていたディ・ロイに絡みに来たイールフォルト。

騒ぎの途中にやって来てあっという間に巻き込まれたヤミー、

そして当人グリムジョー。






「シャウロン、グリムジョーは治るのか?」

「ええ、と・・・そうですね、まあ・・・あと12時間程はこのままでしょうが、

 治る見込みはあります」

「そうか」

「まあその見込みってのに頼るしかねえな」

「はい」

ウルキオラの質問に答え、ヤミーの言葉に頷くシャウロンに、

一番知識が深いということで全ての判断が任されていた。

「ぎゃーっ、馬鹿、引っ張るなって」

履物を押えて、軽いパニックを起こしそうになっているディ・ロイが叫ぶ。

「ばーかばーか」

「やめて、やめろ!怒るぞ!!」

「怖くねー」

「叩くからなっ」

「痛くねー」

「やめろってばーっ!!」

涙目で焦った声を出すディ・ロイを眺めながら、

「問題は世話か」

ウルキオラが真顔で断言した。

「世話だな」

ヤミーが続く。






「ちんこ」

「馬鹿!」

やっと体勢を立て直したディ・ロイが、

自分よりも背の高いグリムジョーの額をペシリと叩く。

「痛くねー」

「・・・」

ふてぶてしい巨大な子どもに、

ディ・ロイはひくひくと引きつった笑みを向けた。

「ばーか」

「はぁ、わかったよもう、馬鹿です俺は、はい」

「・・・」

脱力してグリムジョーの肩に手を置くディ・ロイに、

グリムジョーが笑いかけた。

「ばーか」

「・・・うん」

いい笑顔だった。ディ・ロイの顔がほころぶ。

「とりあえず俺がまずお守りするよ」

(ほだされてる)

(ほだされてますね)

(ほだされてんじゃねーよ)






「それではディ・ロイ、こちらで話がまとまるまで、

 グリムジョーを頼みますよ」

「おう」

グリムジョーの顔は、もう元の無表情に戻っていた。

「うんこ」

「それはもういいから!!」

すかさずディ・ロイの教育的指導が入る。

「おい、ディ・ロイ、おまえがどうしてもと言うなら、

 手伝ってやらんことも無いぞ」

ニヤニヤと笑うイールフォルトの申し出を受けて、

暴れる子どもの被害者は疲れた顔を持ち上げて言った。

「あのさ、手伝ってくれるんならイール、

 頼むからグリムジョーと喧嘩しないでね。

頼むから俺の仕事増やさないでね」

余裕の無いディ・ロイの言葉は本音100%だった。

「なっ、カスがああああっ」

「それ、その切れやすいの困るから」

「・・・っ・・・」

ずばりと指摘されて、イールフォルトがつまる。

「ぷっ」

ヤミーが小さく笑い、シャウロンが口元に手を当てた。

「しかし、実際ディ・ロイだけでは大変だろう、

 交代制で手伝うと言うのはどうだ?」

「そいつはいい」

「で、最初の手伝いは俺達がやろう、なあヤミー」

「・・・」



Wednesday, 25, Jan | トラックバック(0) | コメント(0) | ●Allキャラコメディ | 管理

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