突然 side J (十ミヤ+舞) |
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突然、会いたくなった。 なんでも良いから、口実をつくって、 会いたくて仕方なくなって、 英語の課題をひっさげて、 家に押しかけて、三宅は、驚いた顔をして、 いつもの、思いやりの欠片も無い悪態をつきつつ、 俺を迎えてくれた。 半径、2mの距離に、三宅がいる。のが嬉しい。 のに、傍にいられるだけで満足してた。 のにあろうことか、 三宅がぴったりと俺の背にくっついて来た衝撃。 もの凄い密着したまま、講釈を垂れる三宅。 横にすぐある三宅の顔。 肩にかかっている、三宅の体重。
熱。
「・・・この簡易興奮男、雄ゴリラ、ケダモノ」 「うん、雄ゴリラは確かにケダモノだな」 三宅になじられながら、 舞茸の頭悪そうな相槌を聞き流しつつ、 床に正座させられている、俺。 の位置よりドアに近い所にあぐらの舞茸。ソファーに三宅。 自分でも、ちょっとムラっ気の沸点低すぎだよな、 と思い、素直に反省している。 「でさ、そん時の室さんの顔が面白れぇの!」 「ハハ!あの人の驚いた姿って滑稽だよな」 「滑稽ってオマエ、ひどい表現だな」 俺の存在を無視して、談笑に花を咲かせている三宅と舞茸。 「なぁ、そういや十文字さん、何でいんの?」 「え?」 同学年だと言うのに、なぜか舞茸は俺をさん付けで呼ぶ。 二人の視線が俺を捕らえた。 俺はまだ、正座していたのだが、間が悪くなって足を崩した。 「あー、英語、を教えてくれって、急に家来て」 「フーン」 「それより舞茸、今週のさ・・・」 「俺、邪魔だよな」 「え?」 「いや、さっきの時点でもう邪魔者だったんだけど、 まぁいいや、帰る」 言って、すくと立ち上がる舞茸。 「ちょっ!舞・・・」 ドアに向かって、迷い無く進む舞茸。 「じゃな、三宅」 そっけない、淡白な声の、別れの挨拶。 「帰んなよ、せっかく来たんだから」 俺の言葉に、驚いたような顔。 「でも・・・」 「居てくれよ、頼むから。 おまえいると、ブレーキかかるんだ」 「・・・」 「居づらいだろうけど、頼む」
切実だった。 それだけ俺は、ただ三宅の、傍にいたいと思っていた。 なるべく、嫌がられるようなことを、したくないのだ。 三宅に、愛想を尽かされるのが怖い。 俺は、俺の本能とか野蛮さが怖くて仕方が無い。 三宅を、俺から遠ざけてしまう恐れがある、それらの、 俺の欠点が怖い。だから切実だった。 舞茸に、俺の悪い部分を押さえる役をしてほしい。
俺は、真剣な目で舞茸を見た。 ・・・それは頼みごとをする目だ。 でも、舞茸は俺の目を見てはいなくて、 何を見ていたかというと、ソファーを見ていた。 俺が三宅に、雄ゴリラのごとく迫ったのを、 責められているような気がして、 ちょっと、 気持ちが萎縮する。
「じゃ、お言葉に甘えて、居させてもらいます」 「そうか、悪いな、嫌な役割押し付けて」 「別に、かまいませんよ。 俺は、ただ三宅が心配なだけですから」 「そうか」 「はい」 「ま、舞茸っ!!」 妙な展開に口を挟めずにいた三宅が、 戻ってきた舞茸に抱きつく。 「さすが舞茸!俺の舞茸!愛してるぞ舞茸!」 三拍子で、俺には絶対に言ってくれなそうなセリフを、 惜しげもなく吐き出す。 「・・・俺は」 「ん?」 「三宅 が 十文字さんを困らせたり虐めたり 精神的に追い詰めたりするんじゃないか心配なんだ」 「ええー?何だよそれ。舞茸の裏切りもの~」
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Wednesday, 22, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●三宅受け | 管理
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