『関係』⑪(グリウル) |
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「それで、悪いけれど・・・」
足元を冷気が流れる。
暗い道をウルキオラは勘だけで走った。
「なるべく急いで欲しい」
何かにつま先が何度かひっかかり転びそうになったが、
転んでいる暇は無かった。
「君と、
確か同じクラスの子もいたかな・・・」
耳の奥で蘇る声に急かされ、
必死に走り続ける。
「捕まってしまったんだ」
砂利道、
寝静まった民家の家々の前を過ぎる。
「どうにかして、
処理を受ける前に救い出したい。
あいにく、
今教職員の中に手の空いた者がいなくて、
だから、
頼んだよ・・・」
1:15・・・
バスを待つよりも走るほうが早い。
車通りの少ない真夜中の車道を街に向かい走る。
チラリとみた行き先のメモには、
駅前の24時間営業をしているファミレスについて、
その周りの詳しい説明がしてあるだけだ。
駅までは当然行けるものだとそんな意図を感じるが、
外にあまり出ないウルキオラにとっては、
駅への道こそが迷宮だった。
そこで突然、
携帯が鳴り心臓が縮む。
「はい」
通話しつつ先ほどの失敗を思い出し胃がキリキリと痛んだ。
「俺だ」
聞き覚えの無い声・・・
「誰だ」
「ジャガージャックだ」
「・・・」
「グリムジョー・ジャガージャックだ」
「・・・?」
「・・・、・・・あいにく、
今はおまえのボケに付き合ってる暇はねぇ、
用件だけ言うぞ、
今、
学園に藍染様絶対いるハズだから、
早いとこ例のものを警察の奴等に届けろって、
それだけ伝えてくれ」
「待て」
「あぁ?」
「おまえは誰だ?」
「切るぞ」
「俺の知り合いなのか?」
「知り合いっつーか・・・」
「覚えてないんだ」
「・・・おいおい」
「誰なんだおまえ・・・」
「つまんねー冗談よせよ」
「ホントに・・・」
「へぇへぇ、どうせたいした存在じゃねーよ俺は」
「そんなことはない!」
「・・・!?」
「もし、おまえが俺の知っている者で俺が、
おまえを覚えていないのだとしたら・・・」
「?」
「俺は・・・おまえを」
「おい・・・」
「なんでも無い、悪かった、切るぞ」
「あ・・・ああ」
「待て」
「今度は何だよ」
「もう一度名を教えろ」
「・・・グリムジョー」
「グリムジョー・・・」
「切るぜ」
「・・・」
「ウルキ・・・」
「・・・会いたい、グリムジョー」
「はあっ?!」
「すべてが済んだらおまえに会いたい」
「・・・いやでも顔会わせる、絶対」
「早く会いたい」
「ああ」
「切れ」
「おまえが切れよ」
「無理だ、切れ」
「・・・」
ブツリ、
確かに、
あった電話口の向こうの体温がなくなり、
気付けば、止まっていた己の足を思い出す。
縋りつきたかった。
ずっと、声を聞いていたいと思う自分を自覚していた。
あの不思議な心地よさを手放したくなかった。
(グリムジョー・・・)
失っていると言われたものが突然目の前に出てきた。
それが何であったとかどんなものだったとかを手探りで、
戻ってきた宝者を触りたくるように、
確かめて抱え込みたい。
(グリムジョー・・・)
それがウルキオラにとってどんな存在であったのか知りたい。
どのくらい大切であったのかを感じてみたかった。
(今すぐ・・・触れたい)
グリムジョーという者のすべてを手で確かめたかった。
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Tuesday, 18, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理
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