干渉④(十ミヤ) |
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「ごめん」
・・・繰り返しは英語のリスニングだけでケッコウです。
わかってるんだよ、俺だって・・・ アンタ追い詰めたのは俺で、70%くらいは俺の責任なんだってさ。 ・・・ホントは謝ンなくたっていいンだよ十文字。 でもね、何かやりきれないんだよ。 わかってるけど、どうしようもない。感情がついてこれない。 「二度目だろコレ、・・・ごめんって何度言われてもさ、 ・・・信じらンねぇーよもう、テメーの言葉なんか」 奴が下唇を噛み、拳を握る。 眉をハの字にして、瞳を揺らしている奴に、刃物的な追撃。 「っつーか発情期かっつーの。よく男で勃つよな」 奴の顔がカッと赤くなった。性的な部分でからかわれるのは屈辱的で頭にくる。 俺はそれを知っていたし、例に漏れず、奴にダメージを与えることに成功した。 「勃・・・っ!」 「とりあえず穴さえあれば勃っちゃうんだろ? 便利だなぁ、国宝モノだよ」 「・・・っ」 何か言い返したそうにしているが、今、奴は俺に逆らえない。 真っ赤な顔で震えてる。 「サイテー最悪の発情期野郎、 何にでも興奮すンのはケッコウですけど、俺を巻き込まないで下さぁい」 口端を上げて馬鹿にしたような笑みを作る。 「・・・殺してやる」 ついに奴が、怒りでぶるぶるしている唇を動かして反撃した。 「頭悪い脅し文句ぅ、っつーか犯して殺害って典型的な駄目犯罪者じゃん」 ハハハッって、渇いた笑い。 「しかも相手は男でした、っておまえ笑い話になっちまうぞコレ」 追い討ち、奴のこめかみがピクピクしている。 真っ赤な顔をした奴が、憎々しげに睨んできた。 「ゲス野郎」 悔しそうな声、・・・気分イイなオイ。口なら負ける気がしねぇ。 「とりあえず理由言えっつーの、 何でがまんできなかったンだよ?この少年A」 言い訳してよ、ちょっとイラだち消えるかもしんないから。 「・・っ・・・」 Aは口をもごもごさせた。 まぁ、今の俺に何言ったって20倍にして返されますけど? 一応言ってごらんなさいよ、聞いてやるから。 「・タ・・っがっ・・白になったンだよ・・っ」 え?何?よく聞き取れないンだけど。 「・・・まがっ・・・!頭が真っ白になったんだよ! 何かしないでいられなかったんだ!! ・・・このままっ・・・縁切られンのが、怖かった。 どうしてもおまえを、俺の思い通りにしたかったっ・・・!」 思考回路に、ガラガラとシャッターが降りる。 どうしよう、何も言い返せない。 切ネー声で、王様みたいなこと言っちゃって。 うっかり呆けちゃっただろーが、この天然トキメキ機め。 「・・・恐ろしく馬鹿正直な言い訳だなオイ」 困ったような奴の顔、呆れたような俺の声。 「ホントに、ごめん、ごめんな」 いちいち沁みる、奴の謝罪の言葉が、傷口を治していく。 ・・・イジメ過ぎたかな?なんて反省してる自分がいて、 少し回復した体が軽い。のそのそと片付けを開始した。 奴が手伝おうとして、ポケットをさぐる。ハンカチくらい持っとけよ。 なんか困った顔してる。ちょっと愛しいと思った。 あぁ、言いすぎたね俺。自分も悪いくせにね。 でも俺、性格悪いから・・・ 犯されて悔しくて、アンタにも俺と同じように、 悔しい思いさせてやりたかったんだよ。 ・・・そういう奴なんだよ俺は。捻じ曲がってるんだよ心が・・・。 「あのさ・・・俺、これくらい、 自分で全部始末して、 自分の足で帰れるくらいの根性あるからさ、 もう向こう行ってくンねーかな・・・」 ここにアンタいたら、またうっかりヒドイこと言いそうなんだ。 これ以上、俺の言葉の凶器で、アンタのやたら真っ直ぐな心を傷つけたくない。 さっさとどっかに行ってくれ。
・・・俺はもう平気だから。
「埋め合わせだ」 呟く、奴と目が合った。 「言いすぎたと思ってさ、俺、さっき。 ・・・だから片付けはその埋め合わせ」 困った顔。戸惑っている。 奴はなかなか動こうとしない。 どーせ体ボロボロの俺に片付けはさせらんないとか、 アホみたいに男前なこと考えてンだろ。なぁ? 「・・・十文字」 だったら、フォローを入れてやるよ。 「な、何だよ?」 「この落とし前は明日つけさせる」 「・・・!」
俺から呼び出しするのは初だね。
「でも・・・」 マヌケな顔。 「早くどっか行かねーと、今日中に決めさせて明日から縁切るからな」 言って挑戦的な目を向ける。
もう暗くなって涼しくなった、夜の始まりの空気が心地いい。
奴はかなり迷ったが、 走って去っていった。
重い体に鞭打ってやった後片付け。 帰ったらソッコーで風呂入って、いつもより早めに布団かぶった。
寝る前に、奴の泣きそうな顔を思い出して、ちょっと笑った。
あそこでもし、奴が本当に泣き出してたらどうなってただろう。 どっちが掘ったのかワカンネー状態に陥って、コントみたいになってたかもね。 自分のことじゃなければ、きっと滑稽で面白い。 そこでふと、 頭の中に奴の足跡をつくってしまった、自分の愚かな所業に気付いた。 舌うち、赤面。
遠くに虫の声。開けた窓から透き通った風が入り込んできて、 足元を流れていった。
疲れていたから夢は見なくて、
目が覚めて朝で、だるかったけれど学校は休まなかった。
・・・例の校舎裏。
「見たのか?」 「は?」 待っていた奴が開口一番に言った言葉の、意味がわからない。 ・・・アンタ呼び出された理由思い出してみ? 昨日アンタがしたことの、落とし前付けるためだろーが。 俺の怪訝そうな顔を見て、奴が頭を掻く。 「・・・ナメクジの夢、見たのかって」 ・・・ああ、なんか言ったけなそんなこと。 確か、テメーに犯されるのは苦痛なんだって苦情をぶつけた時に 使ったような気がする。 「・・・見た」 ということにしとこう。 「見たか」 がっくりする強姦魔。 何?人の夢にまでに首突っ込むの? アンタどれだけ俺の中に入り込めば気がすむの? 奴は、しきりに黒目で捉える景色を変えた。
・・・そわそわした態度にイラだつ。
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Saturday, 01, Apr | トラックバック(0) | コメント(0) | ●三宅受け | 管理
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