『言葉』(イルロイ) |
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| 「おまえは、もう少し俺のことを知る必要がある」
と、言われてから色々、頑張ってみたけれども・・・
「ぜんぜんわかってないな」
目の前で、溜め息をつかれちょっと、悲しい気分になった。
いつものように、グリムジョーと談話し、シャウロンに付き纏っていた途中、
イールフォルトに腕を、痛いくらいに引っ張られ皆が、
いるところから少し離れた場所まで連れて来られた。
「・・・俺、なりにその、情報収集とか・・・」
言いかけ、思い切りしかめられているイールの顔を見てやめる。
「なるほど、根本的に意味を、取り違えてるな」
「・・・ン?」
「このカス」
「なんだよ、俺、俺ホントに、シャウロンとかに話聞いたり、してみたりしてな、結構・・・」
「だからわかってないんだ」
「??」
頭に、手を置かれたかと思うと、
「・・・まったく!」
べしんと、叩かれて軽く、舌打ちまでされた。
「ってえなっ・・・っ」
それから、形の良い指が髪に絡み付いてきた。
「まあいい」
見上げると整った顔の口角が、緩やかに持ち上がっていて、
・・・笑ってる。
「凄い、綺麗だなアンタって」
思わず呟いたら思い切り、
「くっ!!」 大きな声で、
「ははははははっ!!!カスが!カスのくせに!!」
笑われてしまった。
「そんなに、笑わなくてもいいじゃねーかよ」
「クク、はははははっ!!!カスカスカス!クソカス!!」
「・・・褒めたのに・・・」 「・・・」
「おうおう、仲いいじゃねえか」
気が付けば、大柄な男が立っていた。
「エドラド・・・」
「聞いたぜおまえら、できてんだってなあ!!
傑作だぜ、ホント、不釣合いカップルってな」
「そ・・・」
「そうだな」
あ・・・
「よくイールフォルトがこんな出来損ないにかまったもんだと思ったけどよ!
もしかして相当、具合いいのかオイ?」
「・・・さあな、まだ試してないしな」
「何?青臭え奴らだな!情けねえぜ」
「なんだと?」
「はは、おいディ・ロイ、せいぜい捨てられねえよう尽くせや!応援してるぞこの幸せもん!!」
「いてっ」
本日二度目の、頭への衝撃。
なんだろう、何か叩きやすいのかな俺の頭って。
笑いながら、去っていくエドラドの残した、言葉を反復する。
不釣合い。
そんなこと、わかってるんだ初めから。
「そうだ、エドラドにもイールのこと、聞きに行こうかな」
「は?」
「ちょっと、追いかけてくるな、じゃ!」
わかってるのに、こうして並んでいることが辛いと思ってしまった。
早くどこかへ・・・逃げてしまおうと考えている自分が嫌だ。
「カスが!」
苛立たしげに、降って来た言葉。
何も、今言うこと無いだろと思った。
「このカス!」
ああ・・・
「本当におまえはカスだっ」
痛い、痛いってば。
「どうしてわからない、俺の、ことをもっと知れと言ったのはあれは、 あれはつまり、ただ、もっと傍にいろと、言う意味だ」
・・・ ・・・。
「はあ?」
「傍にいれば、色々、見えてくるだろうが、それくらい考えつけ、カス」
大概、いつもあの口から出てくる言葉はこちらを、傷つけることばかりだったから、
とてもむず痒くて、可笑しかった。
「ぷっ」
「笑うな貴様、殺すぞ」
「なあ、じゃあ俺、おまえの傍にいても、いいんだな?」
「ああ」
まさか、
「な、ロイ、ディ・ロイ?」
嬉しくて、涙が出るなんてことが、本当にあるなんて思わなかった。
「なぜだ、なぜ泣く必要がある!?」
俺は、もしかしたら涙もろい、奴なのかもしれない。
「なんだ破局か?」
通りすがった、グリムジョーが冷やかしを入れてきた。
「うるさい!ちがう!そうじゃない!泣き止めカス!」
「う、嬉し泣きー・・・」
「そ、そうなのか」
「へへへ」
「けっ、やってろ」
去っていくグリムジョーの、足音と共に煽られた劣等感も遠のいていく。
「鼻水が垂れてるぞ、カス、汚い」
「うん、なあ俺、おまえのこと凄い好き」
「・・・ち、手のかかる奴だな」
呟いて、ハンカチを取り出し顔を、拭いてくれているイールの、
行動は普段からはとても考えられないもので、
他人の、些細な一言に振り回されるのは、俺だけじゃないようだった。
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Wednesday, 25, Jan | トラックバック(0) | コメント(0) | ●イルロイ | 管理
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