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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



リクエストSS 藍染+ロイ


目に、

映った彼はガラスの中にいた。

冷たく、厚いガラスの中で虚ろな目をして、

こちらを見ている。



そんな、予感はしたんだと、

己に言い訳をしてあの目と向き合う。

「冷たいね・・・」

触れると熱を奪うガラスの中を、

冷え切った身体はゆっくりと流れ、

手の届くところへと来た。

硬く冷えた体は生き物のそれを感じさせることなく、

ただ現実だけを纏ってこちらを見ている。

「動けないの?」

頬を撫で肩を摩り、

「冷たい・・・」

胸に抱いて背に手を添える。

「冷たい・・・」

まわした手で背をたださすり続け、

熱を求めているのは彼なのか僕なのか。



己の体温の儚さを知らしめられる。

圧倒的なマイナスに相殺されるプラス。

その、あまりの冷気に熱の、

力が小さすぎて、

壁のような温度差。



何をしても無駄で、

何をしても苦しい。



冷静である表面の裏、心の、深い部分だけが愚かだ。

焦り、取り乱す姿は醜い。

「藍染様」

控えめな擦れ声が耳に届き、

「あの・・・」

「来たかい」

「はい」

呼び出したのは闇の、外れにある静かな、

音の無い場所で。

あまり訪れたことが無いのか、

彼はきょろきょろと辺りを見回す。

「もっと近くへおいで」

「え・・・」

「いいから」

遠慮がちに、

近づいてきた彼と、

目が合う。

「特にこれと言って、

 用があったわけじゃないんだけどね」

引き寄せるのは容易かった。

少しこめた力に、よろめいた彼を抱える。

「ああ、よかった、まだ・・・」

掴んだ腕には温度。

抱いた体に熱。

「よかった・・・」

「藍ぜ、さっ・・・」

胸の中で驚いたような、上ずった声が聞える。

「まだあたたかいね」

「ハ・・・っ・・・?」

すっぽりと収まった彼の小さな身体を抱え、

「あたたかいね」

「は・・・い」

抱き込み、囁く。

「君が・・・」

「??」

「死ぬ夢を見てね」

背をさする。骨。痩せている彼。

「・・・」

「ごめんね」

「いえ」

「冷たくて温度が無くて・・・」

「はい」

「そんな感じで、暖めても暖めても、

 どうにもならないんだ」

「あ・・・

 暖めてくれたんですか?

 俺のこと・・・」

「でも君は冷え過ぎていてとても、

 僕の手に負えなかった」



おとなしく抱かれている彼の、重みが伝わってくる。

その晒された胸から、直に彼の身体が発する熱が、

伝わってきて暖かい。

「俺、死にません」

「・・・」

突然、今まで緊張で満足に口を利けずにいた彼が、

とても強い力を持つ声で、

「そんな、ちょっとやそっとのことで、

 死ぬほど弱くないです」

断言した。

「俺、絶対死にません」

「ふふ、強気だね」

「俺は破面です。

 破面は強いんです」





彼を、駒であると思うには事実が、



己が手で生み出したというその事実が大きすぎる。



「俺、死にませんよ」



あの時、あの夢の中の彼の、

身体は確かに冷たかったけれど、





その奥にあった心は・・・



ちゃんと熱を放って、





生きていたのかもしれない。










Friday, 06, Jan | トラックバック(0) | コメント(1) | ●他CP | 管理

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コメント

はんせい

寒がってるロイを藍染様かギンが暖めてあげる、というリクだったんですがね;
スミマセン。
逆にロイ掴まえてぬくいぬくいしてるよ藍染様。
しかもなんか全体的に暗い・・・
スミマセン。

反省と書いて謝罪です。
スミマセン。(三度目)


 by むー | HP | Friday, 06, Jan


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