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『馬鹿とおっぱい』(青黄)

朝練前の牛丼屋の待ち時間でのこと。
置いてあった雑誌のグラビアページを、
じっと眺める青峰を、
黄瀬は呆れた目で見つめていた。

「青峰っちってホンット巨乳好きっすよね」
「おう、時々おまえに乳付いてる夢見るぜ」

ぶほっと飲みかけていた水を噴いた黄瀬を、
盛大な青峰の笑い声が襲った。
「きもいっス」
「意外とイイぞ」
「いや、意味わかんないっス、
 あんた俺が男ってちゃんとわかってます?
 ノリと勢いでヤッちゃってここまで来ちゃったけど、
 俺だって正直動揺してるし、
 巨乳の女の子好きなら桃井っちとか身近にいるし・・・」
「・・・おまえそれ本気で言ってんのか?」
「や、その・・・うぅ」
青峰の手が、ぽんと黄瀬の頭に乗り、
いつもはこれで大体の事が解決して来たのだが、
今日は違った。
「よし、それじゃぁ今日は一日、
 おまえにおっぱいがある設定で過ごすか」
「は?!」
「なんかさっき、
 他の奴と付き合え的なこと、
 仄めかされてむかついたし、
 いいよな」
「馬鹿じゃないっスか」
「面白そうだろ」
「いや、絶対、面白くないっスよ」
「いいからいいから」
「良くないっス」
大体、おっぱいがある設定、って何だよ、
と心底からツッコミを入れている黄瀬を無視して、
青峰は楽しげに、黄瀬の胸元を見つめだした。
「F・・・ぐらいか?」
「は?!もう始まってるんスか?!
 そん・・・?!
 ・・・開始の合図はちゃんとして欲しいっス」
【開始も何も、ないだろう・・・】
店内で二人の会話を聞いていた全員のツッコミが、
すかさずに入る。
そして無意味に照れて胸元を隠した黄瀬に、
青峰が唇を尖らせる。
「隠すなよケッチィな」
「ケチッっていうか・・・!」
黄瀬の腕を青峰の手が掴んでどける。
「ほら、やっぱFあるって」
「やだやだ、恥ずかしいっスよ、
 何言ってんスか!馬鹿!!」
「やべぇ、なんか照れられると興奮する、
 触りたい・・・」
「いや無理っすよ、ねぇもん!」
「これは?」
青峰の指がプッシュしたのは乳首だった。
「ワッ?!」
黄瀬の悲鳴で、
店内がシンとなり、ふと我に返った青峰を、
黄瀬のビンタが襲ったのは当然の流れだった。

「・・・で、まだそのセクハラが続いてるんですね」
休憩時間中に、胸元を意味なく隠す黄瀬と、
その隠された胸元に熱視線を送る青峰を、
交互に眺めながら黒子が確認をした。
「いつになったら終わるんスか、これ?!」
「知りません、青峰君の気が済むまででしょう」
「うう、もう嫌っス、きもいっス、怖いっスぅ」
ストレス故に言葉に刺を持たせて嘆く黄瀬に、
青峰がむっとした顔をした。
「俺だって男の胸板なんか眺めて何一つ面白くねぇ」
「だったらもう辞めにするっス!」
「駄目だ」
「あああああ゛あああ、もう、何なんスかアンタ!」
「照れて胸隠すおまえが可愛い」
「っ」
黄瀬の顔面が、急激に熱を帯びて赤く染まり、
青峰がにやりと笑った。
「僕、向こうに行ってますね」

立ち去った黒子が、
深く、呆れたような溜息をついたのは言うまでもなかった。



Monday, 29, Apr | トラックバック(0) | コメント(0) | 青黄 | 管理

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