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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



『関係』⑱(グリムジョー+イルロイ)

「生徒達の印、君等の身体にもあるだろう、

 黒く丸いシミが。

 このシミを脱色し、

 虚を一般の人間と変わらない姿にした。

 対『崩玉』装置はしっかりと機能を果たした。

 上手く行ったよ・・・。
 
 昨日、それであの学園の生徒は、

 シミを脱色し、犯罪を実行するまでは、

 捕まる恐れがなくなった」

「・・・」

「しかし一部の生徒は事故で、

 シミを脱色することを越え、

 シミを消されてしまった。

 シミを消されてしまったということは、

 これは警察用語でいう処理を受けた状態と同じでね、

 ウルキオラは大切なものを奪われた、

 つまりグリムジョーのことを忘れてしまったんだよ」

「処理・・・?」

ディ・ロイとイールフォルトと違い、

警察からの説明を受けていないグリムジョーへ、

イールフォルトが補強のため口を開いた。

「処理とは警察が俺達犯罪者予備軍「虚」のシミを、

 消し去る作業のことだ、

 シミというのは俺も、良くわからないが恐らく、

 俺達がこれからする犯罪に繋がる、

 俺達の中にある何らかの犯罪の原因となるもの、

 記憶であったり能力であったり、色々だろうが、

 それが消し去られると、

 どうもそれにつられて、

 大切なものまで巻き添えで消されてしまうらしい。

 この大切なもの、というのも抽象的で、
 
 記憶から人間から能力まで様々だろうと予測できるな」

「待て・・・、「虚」ってのは?!」

「んっとなー」

ディ・ロイが頭の両端に手を当て、

説明を試みようとするのを、藍染が制した。

「あの丘の上の学園の、外国人生徒は、

 ほとんどが「虚」だ、僕が長年集めて、

 あの学園に隠した、未来の犯罪者」

「・・・」

「現地の生徒に紛れさせて、

 上手く一般人と付き合っている、
 
 と主張をしてみたけど、

 警察はどうしても、「虚」を処理したいらしい」

「「虚」・・・って、ええと、つまり、

 犯罪者予備軍って」

「始めからそう言ってるだろう」

「うるせぇ、てめぇ、ってことはあれだろうが!

 ウルキオラも「虚」だってことになんだぞ?!」

「ああ」

「あのお堅い野朗が犯罪なんか起せるかよ!」

「本当にそう思うか?」

「・・・、あー・・・、

 やれねぇことはなさそうだ」

「冷静になったな、いい子だぞグリムジョー」

「誰がいい子だ何様だ牛様か」

ぐっ、と手を上げようとしたイールフォルトを、

ディ・ロイが抑えグリムジョーがそっぽを向く。

「しかし今のウルキオラは、

 「虚」ではない」

「!」

藍染がふいに口を開いた。

「グリムジョーを奪われる代わり、

 ウルキオラはもう、

 何者にも追われる必要のない、

 安全で平和な人生を手に入れた」

「・・・」

「このまま、彼を真っ当な人間として、

 学園から解放してやるのも手かな、
 
 君との仲は失われるが、彼の人生は開ける」

衝撃的な現実。

グリムジョーは立ち尽くし、

イールフォルトとディ・ロイは固まった。

藍染は微笑をすると車の窓を閉めた。

藍染の車がすーっと街の方へ流れて行くのを見送る。

「グリムジョー」

ディ・ロイが声を掛けても、

グリムジョーはびくりとも動かなかった。

「何をぼんやりしているんだ、

 あの言い草、もしかしたらあの男、

 ウルキオラを放校するかもしれないぞ」

「・・・」

そのほうがウルキオラは幸福になるのでは、

といった言葉を咽喉元で止めて、

グリムジョーの心は揺れた。

「やだよ俺、ウルキオラが居なくなんの、

 サビシーじゃん?!

 ってか、ウルキオラは、

 グリムジョーとくっつかなきゃ駄目だと思うんだ、

 だってグリムジョーはウルキオラのこと愛してるし、

 ウルキオラはグリムジョーのこと一番大切なんだよ」

「愛とか言うな」

「この状況で照れるな」

ぼそりとしたグリムジョーの反論を、

イールフォルトがからかい、

グリムジョーの小突きが返る。

イールフォルトとグリムジョーの、

地味な小突き合いが開始され、

ディ・ロイが参戦するべくグリムジョーに体当たると、

パーン、グリムジョーの手がディ・ロイの頭を打った。

「ディ・ロイ!!」

「何すんだよグリムジョー!」

「加わろうとすんな!うぜぇ!」

「鬼か貴様ぁああああ!!」

ディ・ロイを庇うように胸に抱き、

イールフォルトが怒鳴る。

「おまえだっていつも叩いてんだろっ!」

「俺が叩くのとおまえが叩くのは違う!」

「イールが叩くほうが痛い」

「貴様は黙ってろ!!」

チュンチュン、言い争う三人の、

頭上を鳥が飛んでいく。

「わー・・・さわやかな朝だなー」

ディ・ロイがふと間の抜けたコメントをし、

イールフォルトの手が飛ぶ。

「イッテ?!」

「暢気もの!」

「うわぁ事実!」

「カスが!」

「カスじゃねぇ馬鹿」

「馬鹿はおまえだ」

「それも事実!」

テンポ良く、流れていく二人の会話の中、

グリムジョーが姿を消し、

二人がふと顔を上げると向こう、

街の方へ向かい走るグリムジョーが居た。

「グリムジョー?!

 どこ行くんだよ?!」

「会うんだよ!」

「ウルキオラに?!」

「ああ!!」

「面白い、手伝おう兄弟!!」

「勝手にしろ狂牛」

「グリムジョー!俺も手伝うー」

「足ひっぱんなよ」

「ひっぱんねぇよー」

ふいに、振り返ったグリムジョーの視界には、

笑った二人の顔があり、少し緩めた足に、

二人はすぐに追いついて来て困る。

「へへっ」

「遊びじゃねぇぞ」

小さく、笑い声を上げたディ・ロイをパーンと叩く。

清々しい音が、朝の川を揺らした。








Sunday, 22, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理

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