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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



『関係』⑰(グリムジョー+イルロイ)

「おや、グリムジョー」

「?!・・・こうちょ・・・藍染様」

学園への道の途中、ガードレールの続く川沿いの車道。

夜明けの光の中で、ウルキオラの姿を求めて、

走り出していたグリムジョーに、

静かに近づいて来た車。

現れたのは藍染だった。

「何でアンタ・・・」

動揺で声が裏返った。

瞬時に藍染の使いとして、

動いていたウルキオラのことを思い浮かべた。

「あいつは・・・、その、何かあったみたいで」

「知ってるよ」

藍染の指示通り、速やかに動くことができなかったウルキオラ。

気が付けば庇うような発言をしていた。

「まったく優秀な彼らしからぬ事態だね」

「はい・・・」

「期待していた分驚いたが、仕方がない、
 
 僕が出れば良いことだからね」

「あの・・・、どこへ?!」

「彼と彼等のところに」

彼とはウルキオラ。

彼等とは警察達。

「・・・警察達とウルキオラ、

 合流してるってことっすか」

「うん、君が彼等の元を離れたからね」

「?!・・・は?!」

「ウルキオラは今大切なものを奪われて居る、

 奪われるということは、二度と出会えなくなること、

 ウルキオラの目指す所に、グリムジョー、

 君が居たから、

 ウルキオラは運命に妨害されたんだ」

「・・・」

「そういうものなんだよ、

 彼が君に出会おうとすればするほど、

 彼には災が降りかかる」

「わけ・・・わかんねぇっす」

「君は大人しくしていなさい」

「・・・」

つまりウルキオラに起こった何かの事故は、

グリムジョーの存在のせいなのだという。

拳を握ろうと腕を緊張させたところで、

横から何かがどんと身体を押して来た。

「今の話ホントですかっ!」

「?!」

友人の、小柄な青年が懐に立っていた。

顔を上げると、うんざりしたような顔の長髪美形もいた。

ディ・ロイとイールフォルトだった。

「ウルキオラ、が、その、大切なものを、

 奪われてるって・・・ことは、あれ、

 あの警察の奴等が言ってた・・・」

「処理された状態」

ディ・ロイの言葉を先取って、イールフォルトが呟く。

「良く知っているね」

「藍染様!俺何かしたいです、

 ウルキオラ・・・っ、のために何か、

 ・・・どうすればいいですか?!!」

「まずは落ち着きなさい、

 それに君達、一応、無断外泊は校則違反だよ」

「むだんがいは・・・」

無断外泊という言葉で何を想像したのか、

イールフォルトは頬を染め、

うわ言のようにその響きをなぞると、

「っ」

素早くそっぽを向いた。

そんなイールフォルトの頭をグリムジョーがパーンと叩いた。

「・・・痛い」

「何で叩かれたかはてめぇが一番良くわかってるはずだ、

 このスケベ牛」

「・・・っく」

「大丈夫かよイール、

 ・・・撫でるか?!」

パーン、今度はディ・ロイの頭がイールフォルトに叩かれた。

「ってぇ?!」

「このタイミングで優しい言葉を掛けるな!!」

「ハ?!」

「理不尽極まりねぇ怒りだなおい」

「えっと・・・」

そこで藍染が、困ったような声を出し、

三人は我に帰った。

「すいません藍染様・・・」

「藍染様、あの、俺達とにかく、役に立ちたいんすけど!」

「右に同じです」

少しの間、茶色の静かな目が逡巡し細められる。

「では情報だけ、・・・あげるから、

 どうかな、君達にできることは君達が探しなさい」

「・・・」

「はい!!」

優しく突き放された対応だった。

黙ったグリムジョーと、

考えのなさそうな様子で、

底抜けに明るい良い返事をしたディ・ロイ。

イールフォルトは顔を顰めた。

「いいかな、それで」

「はい!!」

ディ・ロイの返事は、とにかくさっぱりしている。

パーン、とイールフォルトの飛びやすい手が飛んだ。

「痛ぇよイール!!何すんの?!」

「少しは考えて発言しろ!!」

「・・・?」

怒鳴られて眉を下げ停止しているディ・ロイを横、

グリムジョーは胸に不安が広がって来ていた。

情報が絶望的であったらどうする、

情報を利用して、自分は上手く動けるのか。

「ウルキオラは・・・」

藍染の口が動くのが怖い。

「今、僕の持たせた対『崩玉』装置を持って、

 彼等のところに行ってる、

 対『崩玉』装置とはその名の通りに、

 『崩玉』の効果を無にするものだ」

「・・・」

緩やかな春の風が川面をなびかせ、

グリムジョーは藍染から、目を逸らさぬよう努めた。

「『崩玉』は将来に犯罪を起すだろう者の中にある、

 犯罪の可能性のシミを見つけ、

 未来の犯罪者を我々に知らせる装置だ。

 そのシミを、『崩玉』が感知できぬよう、

 脱色させるのが対『崩玉』装置、

 警察達の使っていた処理装置を改造して、

 できたものなんだけど。

 僕は昨日の全校集会で、

 この装置を起動した・・・」

「えっ」

ディ・ロイが口を挟む。

イールフォルトに瞳で諭され黙る。








Sunday, 22, Mar | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理

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