『関係』⑲(ウルキオラ) |
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| 「やっと来たのか」
待ち受けていた朽木白哉という男は、
仏頂面で冷たい声を出した。
「遅れて申し訳なかった」
謝罪し、席に着く。
「その男は?」
病院で知り合い、
ここまで送る役を申し出てくれた、
オレンジ髪の青年が隣で注目を浴びた。
「アッ、俺は・・・」
青年が反射的に口を開いた。
ウルキオラはそれを制し、なるべく、
目の前の得体の知れない敵との関わりを、
青年にさせたくないことを強調した。
「来る途中、事故に遭い、
・・・負傷しまして、
お世話になった病院の、
親切な青年です」
「事故・・・」
朽木がぴくりと反応し、
「なるほど、それで遅かったのか」
朽木の他に居た、癖毛の男が呟いた。
朽木の他にウルキオラを待ち受けていた男は二人で、
赤髪の男と癖のある黒髪のごつい男、
ごつい男のほうは、オレンジの青年に「チャド!」と呼ばれ、
互いに驚きあっていた。知り合いらしい。
この男の頬にあった、殴られた痕が気に掛る。
「問題のものは、これだ」
ウルキオラが藍染に渡されたものの一つ、
封筒をそっと机に置く。
「ディ・ロイとイールフォルトを、
解放して欲しいんだが・・・」
「二人ならすでに逃げた」
「・・・」
「見あたらねーだろうがボケ」
赤髪が毒づき、朽木が目で嗜める。
「では、そちらにいる癖毛の青年を代わりに解放してもらいたい」
オレンジの髪の青年が驚いたのが横でわかった。
ついで、二人の警官も少しの動揺を見せた。
「条件の変更は認められない」
「ならば交渉は決裂だ」
封筒を引っ込めようとした手を押さえられる。
「これはもうこっちに出されたもんだろーが」
「・・・、ではこれは、ディ・ロイとイールフォルトを、
逃がした分としよう、もう一つの預かりものは彼の解放の後だ」
「・・・は?!」
「嵌められたな」
朽木が悟り、赤髪が舌打つ。
ウルキオラは藍染から渡された、筒と封筒の封筒だけを出した。
「彼を解放しろ」
「どうするんスか先輩」
「解放する」
「・・・」
赤髪は不服そうに、癖毛の男を立ち上がらせ、
ふい、と顎を動かす。
「どっか行け」
「・・・」
癖毛は考えた末、オレンジ髪の青年の、
隣に腰を掛けた。
「そっちの絵面がむさくなっただけじゃねーか」
「我々を前に随分な選択だ」
「ってかチャド!! 何でおまえこいつらに捕まってたんだよ?!」
一斉に入った突っ込みの、
友人からのものにだけ、
「ワケは後で話す」
返事をしてチャドはまっすぐ前を向いた。
「おい!」
青年はそれに不服そうに声を荒げたが、
ふとしてウルキオラに目をやった。
「つか、知り合いかおまえら?!」
ウルキオラとチャド、指しての質問に、
ウルキオラもチャドも首を振る。
「ってことは・・・、てめっ・・・」
今度はウルキオラ一人に向かって、
突っ込みが来ることが予想される。 「見ず知らずの奴のために大事な条件使ったのかよ?!」
責められているような、気遣われているような声。
「おまえの知り合いのようだった」
飾りのない答えが出る。
「いや俺にとっちゃダチだけどよ?!」
「なら俺にとってもダチだ」
「ダ・・・」
ウルキオラが真面目な顔で俗語を真似したことに、
青年は少し口端を上げ、脱力した。
「私語は謹んでくれ」
警察の嗜めが入り、二人は前を向いた。
「・・・」
「遊び場じゃない、取引の現場だ」
「悪かった」
ウルキオラが冷静になり、青年が黙る。
「もう一つをどこへやった?」
「言えないな、
無理に取り上げられることもある、
場所を知らせよう、
俺達がここを出てからだ」
「・・・」
「さすがだね、ウルキオラ」
黙った警察達と、ウルキオラが向かい合うところへ、
ひょっこりと顔を出したのは藍染で、
場の空気がひっくり返った。
「藍染・・・!」
赤髪と白哉が身構え、
藍染が笑う。
「さて、宣言しようか、
君等の負けだ」
「・・・何?」
「正確には君等の上司の負けだ」
「・・・」
「君達は良く頑張った、
事故に巻き込まれた想い人と家族のため、
いいや、自分のためでも、あるのだろうね」
「・・・」
「藍染様・・・」
ウルキオラの疑問に、
答えるべく藍染が白哉と赤髪を指す。
「彼等の大切な人は、
崩玉の事故に巻き込まれてね、
虚でもないのに大切なものを奪われた、
奪われるということは会えなくなること、
彼等はそれ以来、彼女等に会えなくなっている、
近づきすぎると、事故が発生するんだ、
あの現象への一つの答えだね、
無理に会おうとすれば、殺されるのだと、
運命というものに」
「・・・」
「ウルキオラ、
君は恐らく、グリムジョーが居たここに、
向かおうとしていたから事故に遭った」
「信じられません」
「・・・」
「先輩の恋人はそれで死んでんだよ」
「・・・」
赤髪が悔しげに吼え、
その場が凍る。
「馬鹿な真似は・・・しねぇことだな」
「・・・」
「おい?」
青年が気づいて、ウルキオラの顔の前で手を振った。
ウルキオラの意識はぼんやりとして定まらない。
あの声の主に会う事は許されない。
それがただ悲しくて気が遠くなっている。
「ウルキオラ、・・・可哀相にね、
だが、幸いなことに君は彼のことを忘れている、
彼はどうだか知らないが、少なくとも君の心は、
彼を切り捨ててもきっと無事で居られる」
続
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Sunday, 05, Apr | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理
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