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カテゴリーの『取扱について』を読んで下さい。
 



『関係』⑳(グリムジョー+ウルキオラ)

「藍染、言い方が悪いな」

白哉の尖った声に、藍染は笑った。

「これから切り捨てられる彼のことを思えば、

 この子の心に少しの罪悪を残すぐらい・・・、

 さてウルキオラ、何が何だかわからないだろう、

 そのほうがいい、そのうちに、

 君は僕と共に遠くへ行こう」

「・・・」

「その前に筒の場所を教えてもらおうか」

「・・・」

「まだ渡していなかったのかい」

「すいません」

「なかなか利口な子どもだ、

 我々から逃れるべく、条件として利用しようとしている」

藍染が微笑み、ファミレスの中に、

朝の日が鮮やかに降り注いできた。

その明るさはあまりに、さっぱりとしていて、

これから来る別れのじんわりとした恐怖に似ていた。

『ウルキオラー、ノート見して、

 寝てたー』

ディ・ロイ。

『ディ・ロイを引き取ってくれウルキオラ、

 このカス!ピアノに飯を溢して・・・』

イールフォルト。

『優等生様め』

ヤミー。

『・・・嫌でも顔会わせる、絶対』

グリムジョー。

『グリムジョー・ジャガージャックだ』

『てめぇの冗談に付き合ってる暇はねぇ』

『・・・今からでもいいから急げよ』

冷たい声だった。

その声が暖かくなることを夢見て、

その声の主と顔を合わせることを夢見て、

夢ばかり見て、現実に出会うこともなく。

「グリムジョー・・・」

ウルキオラが姿を消せば、グリムジョーは怒るだろう。

もう声さえ、聞かせてもらえないだろう。

素直に、己の身の危険を案じ、グリムジョーから避ける道を取っている己の、

生への執着に驚いた。死にたくない心・・・。

死を恐れずに、グリムジョーの元、走ってゆく勇気が、

何故備わっていなかった。迷う心。

脳裏を過ぎるのは、意を決して会おうとして、

グリムジョーを目前に死が訪れるという想像。志半ばの死。

昨晩藍染に飢えられた、死のイメージは強かった。

警察の睨む中、ウルキオラとチャド、オレンジの青年、藍染は帰路に着いて、

警察は例の筒を探すために現在奔走している。





朝日を浴びて、きらきらと光る川の美しい様が表面的に、

ウルキオラを楽しませていた。

藍染の車の中、ウルキオラは学園の方角を見た。

何もかもに、あまりにも急な別れを告げなければならない。

「ウルキオラ・・・」

「はい」

「死は怖いね」

「はい」

「君は正しいんだ」

「・・・はい」

藍染のほうを、向くことができなかった。

藍染がこちらの様子を伺ったのがわかる。

「僕が朽木白哉に渡したものはね、

 彼等が開発した処理装置の、

 絶対性の正体を、見破ったデータだ、

 彼等の上司はあれで、

 彼等を失うだろう」

「どういう意味です?」

「来たね」

場所は朝の河原、

道はT字になっており、

一つの道からは警察が、

一つの道からはディ・ロイとイールフォルトと、

見慣れぬ強面の男が、

もう一つの道からはあのオレンジ髪の青年とチャドが、

それぞれ走って来ており、その向こうから、

数匹の黒い犬が追って来ている。

「・・・?!」

藍染は車を止めた。

ウルキオラは窓を開け、

身を乗り出す。

「先輩コイツラまじ凶暴っすよーーーーー!」

「何とかしろ」

「先輩こそ何とかして下さい!!

 たかが犬ですよ?!」

「たかが犬でも数が数だ」

警察達の声、

「なんっなんだこいつらぁあああー」

「わからん」

オレンジ髪の青年と、チャドの声。

「うっそぉおおー!!

 どうなってんだよこれぇぇえええー!」

「喚くなカス!俺が守ってやると言っているだろうが!!」

「犬なんかで諦めるかよぉおおおお」

ディ・ロイと、イールフォルトの声。

それともう一つ。

近づいてくる強面の青年が、

ふとこちらに気づく。

ウルキオラの背を冷たいものが走り、

続いて顔が火照る。

心臓が爆発するような速さで、脈打ち始め慌てる。

「ウルキオラ、

 大丈夫、死なないんだ、

 ただ僕の趣味で、

 君がどう出るか見ようと思っていたんだけど、

 彼が出るのが早すぎたというか・・・」

「ウルキオラァアアー!!」

「?!」

「てっめぇどこ居たコラ!

 殺すぞ!心配させやがって・・・!!」

バン、と車にぶつかり、

現れたグリムジョーをただ呆然と見つめる。

「うわっ!!あいつらだ!!」

ディ・ロイの声。

「貴様等・・・」

警察の声。

「どうなってんだ!」

オレンジの髪の青年の声。

「はは・・・」

事態の急さと、頓狂さに、

糸の切れたような音が腹から聞こえた。

「ははは・・・どうなってる・・・、

 は・・・」

ウルキオラは笑っていた。

「この犬が正体だ」

「?」

今や関係者全員を囲んで、唸っている犬の群れ。

目の狂ったような光から、危うさが滲み出ている。

「処理されたものの匂いに反応し、

 その影を追って、処理された者を監視する、

 運命は作られていた」

「・・・」

「丘の上には今、たくさんの処理された虚がいる、

 それでここまでの数が集まったんだね、

 本来は一匹で、ほそぼそと運命を作るのだろうけど、

 これでボロが出た」






Sunday, 05, Apr | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理

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