『関係』⑳(グリムジョー+ウルキオラ) |
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| 「藍染、言い方が悪いな」
白哉の尖った声に、藍染は笑った。
「これから切り捨てられる彼のことを思えば、
この子の心に少しの罪悪を残すぐらい・・・、
さてウルキオラ、何が何だかわからないだろう、
そのほうがいい、そのうちに、
君は僕と共に遠くへ行こう」
「・・・」
「その前に筒の場所を教えてもらおうか」
「・・・」
「まだ渡していなかったのかい」
「すいません」
「なかなか利口な子どもだ、
我々から逃れるべく、条件として利用しようとしている」
藍染が微笑み、ファミレスの中に、
朝の日が鮮やかに降り注いできた。
その明るさはあまりに、さっぱりとしていて、
これから来る別れのじんわりとした恐怖に似ていた。
『ウルキオラー、ノート見して、
寝てたー』
ディ・ロイ。
『ディ・ロイを引き取ってくれウルキオラ、
このカス!ピアノに飯を溢して・・・』
イールフォルト。
『優等生様め』
ヤミー。
『・・・嫌でも顔会わせる、絶対』
グリムジョー。
『グリムジョー・ジャガージャックだ』
『てめぇの冗談に付き合ってる暇はねぇ』
『・・・今からでもいいから急げよ』
冷たい声だった。
その声が暖かくなることを夢見て、
その声の主と顔を合わせることを夢見て、
夢ばかり見て、現実に出会うこともなく。
「グリムジョー・・・」
ウルキオラが姿を消せば、グリムジョーは怒るだろう。
もう声さえ、聞かせてもらえないだろう。
素直に、己の身の危険を案じ、グリムジョーから避ける道を取っている己の、
生への執着に驚いた。死にたくない心・・・。
死を恐れずに、グリムジョーの元、走ってゆく勇気が、
何故備わっていなかった。迷う心。
脳裏を過ぎるのは、意を決して会おうとして、
グリムジョーを目前に死が訪れるという想像。志半ばの死。
昨晩藍染に飢えられた、死のイメージは強かった。
警察の睨む中、ウルキオラとチャド、オレンジの青年、藍染は帰路に着いて、
警察は例の筒を探すために現在奔走している。
*
朝日を浴びて、きらきらと光る川の美しい様が表面的に、
ウルキオラを楽しませていた。
藍染の車の中、ウルキオラは学園の方角を見た。
何もかもに、あまりにも急な別れを告げなければならない。
「ウルキオラ・・・」
「はい」
「死は怖いね」
「はい」
「君は正しいんだ」
「・・・はい」
藍染のほうを、向くことができなかった。
藍染がこちらの様子を伺ったのがわかる。
「僕が朽木白哉に渡したものはね、
彼等が開発した処理装置の、
絶対性の正体を、見破ったデータだ、
彼等の上司はあれで、
彼等を失うだろう」
「どういう意味です?」
「来たね」
場所は朝の河原、
道はT字になっており、
一つの道からは警察が、
一つの道からはディ・ロイとイールフォルトと、
見慣れぬ強面の男が、
もう一つの道からはあのオレンジ髪の青年とチャドが、
それぞれ走って来ており、その向こうから、
数匹の黒い犬が追って来ている。
「・・・?!」
藍染は車を止めた。
ウルキオラは窓を開け、
身を乗り出す。
「先輩コイツラまじ凶暴っすよーーーーー!」
「何とかしろ」
「先輩こそ何とかして下さい!!
たかが犬ですよ?!」
「たかが犬でも数が数だ」
警察達の声、
「なんっなんだこいつらぁあああー」
「わからん」
オレンジ髪の青年と、チャドの声。
「うっそぉおおー!!
どうなってんだよこれぇぇえええー!」
「喚くなカス!俺が守ってやると言っているだろうが!!」
「犬なんかで諦めるかよぉおおおお」
ディ・ロイと、イールフォルトの声。
それともう一つ。
近づいてくる強面の青年が、
ふとこちらに気づく。
ウルキオラの背を冷たいものが走り、
続いて顔が火照る。
心臓が爆発するような速さで、脈打ち始め慌てる。
「ウルキオラ、
大丈夫、死なないんだ、
ただ僕の趣味で、
君がどう出るか見ようと思っていたんだけど、
彼が出るのが早すぎたというか・・・」
「ウルキオラァアアー!!」
「?!」
「てっめぇどこ居たコラ!
殺すぞ!心配させやがって・・・!!」
バン、と車にぶつかり、
現れたグリムジョーをただ呆然と見つめる。
「うわっ!!あいつらだ!!」
ディ・ロイの声。
「貴様等・・・」
警察の声。
「どうなってんだ!」
オレンジの髪の青年の声。
「はは・・・」
事態の急さと、頓狂さに、
糸の切れたような音が腹から聞こえた。
「ははは・・・どうなってる・・・、
は・・・」
ウルキオラは笑っていた。
「この犬が正体だ」
「?」
今や関係者全員を囲んで、唸っている犬の群れ。
目の狂ったような光から、危うさが滲み出ている。
「処理されたものの匂いに反応し、
その影を追って、処理された者を監視する、
運命は作られていた」
「・・・」
「丘の上には今、たくさんの処理された虚がいる、
それでここまでの数が集まったんだね、
本来は一匹で、ほそぼそと運命を作るのだろうけど、
これでボロが出た」
続
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Sunday, 05, Apr | トラックバック(0) | コメント(0) | ●高校生破面 | 管理
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